2000年日本SF大会ゼロコン活動報告
 2000年8月5日、机上理論学会は日本SF大会で論文発表会をおこないました。
 以下はSF大会担当であり、発表者の一人である加藤からの報告です。


●文.加藤法之

 机上理論を笑えた者は幸福である。心豊かであろうから。
 大仰なキャッチを書いたが、実際、僕等のイベントに付き合ってくれた人は、根気と寛容に優れていたように思う。
 去る8月5日と6日、パシフィコ横浜にて第39回日本SF大会、通称ゼロコン(2000年だから)が開催されたのだが、上記のイベントとは同大会中、5日17:00より90分間、渡辺氏と僕とで行った“机上理論学会発表会”のこと。
 本イベント、実は二回目である。先年のヤネコンでもやっている。が、何を隠そう、あまりのつまらなさに時間中に客がいなくなるという悲惨な結果であった。苦悶と疲労の末、心機一転修行に入り、山に籠もること10ヶ月。いよいよ今度こそと思ったのだが...。
 実際、段取り悪かった。結局準備不足だったし、そもそも発表用の原稿忘れてたし。こんな状態でやったから、特に中盤は3分単位で会場が静まることすらあり、作り笑いの下では潰瘍になりかけていた。今回まがりなりにも最後までできたのは、僕等が上手くやったと言うよりも、お客さんが寛容だったというほかはない。まったくこの点、来場してくれた皆さんには感謝の気持ちいっぱいである。

 とはいえ、お客さんが帰らなかったのは事実。少し述懐しておくのも意味がありそうだ。

1.(短い)新作論文の発表
・とんだしゃぼん玉
:机上理論で何が面倒くさいって、机上理論とは何かの説明であることは論を待たないだろう。そもそもお笑いの説明って野暮極まりないのだ。だから短い論文を発表して、雰囲気を伝えようと言う目的で作ったもの(僕の論文は全部長い)。しゃぼん玉の歌詞から、歌の主人公が爆死したことを読み取る内容。作詞者の野口雨情さんには、お笑いにしてしまったことをこの場でお詫びいたします。
・人類の起源
:各都市の人々の歩行速度とビッグバン宇宙論を重ね、最も速い都市が人類の起源から最も進んだ都市であるという論。一番速いのは日本だから、当然日本がサイコーであるという風に論理が進む。(これに付け足して、思想の赤方偏倚と北朝鮮の思想のブラックホール性も説明。)
・ハトポッポ理論
:2000年問題みたく、デジタル文明は砂上の楼閣というイメージがある。アナログも少しは見直そうよという論調で、伝書鳩の通信媒体としての高度化を目指そうという論。未完成気味なのだが、“ポッポや”という落ちが使えるのは今年までだろうと思ってやった。
・犯罪の特許権
:独創的な考え方は保護されるべきである。それは犯罪方法にも例外ではない。という論。主張としては充分面白いと思うのだが、聴衆にあまり伝わらなくて残念。
   (2000年上期論文集所収“新たなビジネス特許許可局”)

2.机上理論ミニ座談会
机上理論の醍醐味の一つに、みんなで集まってバカ話をしているときの論理展開の果てしない逸脱という点がある。うまくいくとドラッグパーティー並に盛り上がるこの雰囲気を伝えたくて企画したのだが、如何せん企画者二人でやるのは難があった。一応20個くらいの問題を用意したけど、流石に間延びしちゃった(この間に席を立ったお客さんには悪いことをしました。)から、もう少し吟味して5つくらいにした方が良かった。でもいくつかの問題に対し、お客さんが意見を出してくれたのは嬉しい限り(星の年齢と人種の色から、黄色人種優越論を導くあたり、机上理論的センス十分な方も!)。会場を巻き込んでどう盛り上げていくかというのは、アドリブが苦手な僕の今後の課題である。

3.(既存の)論文の発表
そもそもこの部分がイベントの目玉だったのにも関わらず、2.で時間を掛けすぎてしまって大失敗。言いたい論文は山ほどあったのに...。
・宝くじ犯罪
:身を持ち崩して良いのはいくらの犯罪からだという疑問が宝くじの金額と同程度という結果になったことから、犯罪と宝くじの相関関係を論じたもの。キリスト磔刑の両脇の受刑者が“前後賞犯罪”の例であり、頻出する17歳犯罪は“組違い賞犯罪”の例であるという感じに推論していく。落ちの“割り切れない思い”ってのは伝わったのか?
   (2000年上期論文集所収“ドリームジャンボな犯罪”)
・京都守ります
:京都は伝統の町といわれるが、出来た当初は最新鋭の町だったはずである。ということは、京都の“創始者”の気風に今一番近いのは“最新鋭を進む”コギャル達である。という論。これも内容は面白いと思うが、聴衆が内容を追えない発表になってしまったことが惜しまれる。
   (1999年後期論文集所収“同題”)

 どれが一番面白かったかは客観的になれないので何とも言えないが、70席ほどの教室はほぼ満席で、立ち見まであったし、用意した資料や見本の論文集があっと言う間に無くなったことを踏まえると、まぁまぁ気に入ってもらえたのではないかと思っている。でも基本的に観衆の“アマチュアのイベンターに対する寛容な視線”に助けてもらったことを忘れたわけではないので、今後に向けての反省することしきりである。
 ただ、これは自画自賛というレベルを超えて、机上理論というのはオタク的インテリの新しい娯楽になりうると思っているので、うまく伝えられるようになりたいとはふつふつと感じている。
 そのため今回一番の収穫は何と言っても、来年またやろうという元気を来場の皆さんから頂けたことである。来場ありがとうございました。次回もよろしく。



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