◆ 2001年日本SF大会企画結果報告 ◆
2001年8月18〜19日のどこかで、机上理論学会は日本SF大会で論文発表会を行いました。
徹夜イベントの最終時間に行われた発表会でエンディングにも重なっていたにも関わらず多くの参加者に聞いて貰うことができました。発表した内容の一部は2001年後期論文集に収録されていますが、オリジナリティの高い内容で、盛況な発表会となりました。
以下は発表を行った2名の結果報告です。
2001年度SF大会参加報告
加藤法之
うわ、こりゃ駄目だ。
2001年8月19日午後0:30、幕張メッセ国際会議場201B小会議室に集まった人々を一瞥して、内心に響いた言葉。
それは、聴衆の皆さんがた全ての顔にありありと浮かぶ疲労の表情と、なによりも80人は入る会場の半分も埋められなかった人数を見ての、隠しようも無い筆者の慨嘆だった。
疲労の理由は明らかだ。施設の終日使用を許された今回の大会では、開催日である土・日が夜通しで行われているため、ほとんど徹夜に近い参加者はこの時間になると既に瀕死状態にあったからだ。ゆらゆらと身体を遠大なリズムで揺らしながら会議室に入ってくる生気の無いさまは、言い方は悪いがさながらホラー映画の生ける死体の如きものであった。
と、ぼやいても仕方がない。筆者と相棒の渡辺氏、それに今回初参加の門馬氏は内心気を取り直し、マイクを握って語りかけた。以下はそのプログラムと、大体の反応である。
1.新世紀除夜の鐘
加藤が発表。除夜の鐘を突くのに時間がかかるから、いっぺんに突いてしまおうという提案。オチはそこそこ受けたと思うが、一休さんのOPを手に入れるのが大変だった。
2.シュレディンガーの行方不明者(2001年前期論文集掲載。)
渡辺が発表。沈没したえひめ丸中の行方不明者は、遺体がみつかるまではずっと行方不明なので、シュレディンガーの猫と同じように半死半生なのでは、という主張。時事ネタとしてギリギリだった。まぁまぁ受けてほっとした。
3.量子論あれこれ
加藤が発表。ぼーっとした学生がシュレディンガーの猫を見つけられるとか、死ぬということの定義、幽霊の寿命にいたる珍説を披露。前論文を受けてのつかみのつもりだったのだが、ちょいウケに気を良くしてついつい長話をして、本題を話せなかった。知人にはかなり受けたネタだったのだが、量子論がなじみが無いのかホントに面白くなかったのか、幽霊ネタは受けなかった。
4.ちび黒サンボのバター
渡辺が発表。ちび黒サンボでは虎がバターになってしまうというネタがある。あれはどうして出来るのかを追究し、やがて驚くべき真実が!という内容。ネタの内用はともかく、あれは実はバターではなくギースという食べ物であるとか、舞台はマレーじゃないよとか、観客の皆さんの突っ込みが多かったことが嬉しかった。
5.小と中の狭間で(2000年前期論文集掲載。藤野竜樹作)
補欠にしていたのだが、急遽加藤が発表。薬指は変な名前だなぁって疑問から始まり、やっぱ薬指でいいやって結論になる。この作品のオチはかなり落語色の強いものであり、藤野作品中でも傑作だと思っているのだが、全く受けなかったのがかなりショック。これは演者の技量にもよるのだろうと反省しきり。
6.ハリセンボンを飲むと
渡辺が発表。ハリセンボンを飲むと嘘をついてもいいという逆転発想ネタ。オチのグラフは結構受けたので良かった。こうした絵など、視覚的にウケを取るタイプのものは、本当はプロジェクターとかで見せたかったところなんだけど、その場でプロジェクターがあるって言われてもどうしようもないよ、大会スタッフさん。
7.かごめかごめの謎(2001年前期論文集掲載。藤野竜樹作)
これも補欠だったんだけど、急遽加藤が発表。かごめかごめの歌には長の年月を歌い継ぐに足る実は驚くべき秘密が!って内容。そこそこ受けたんだけど、オチを先に言っちゃ駄目よ渡辺君。(門馬君は参加してくれたのにやってもらったことはこの発表のとき、白版にかごめの歌詞を書いてもらったことだけだった。ゴメンね。)
と、ここまでで75分くらい。時間が余ったので最近のネタ紹介をした。ドラえもんにでてくるバイバインという、饅頭に細胞分裂を繰り返させる道具の仕組みはどうなっているのかという話題は観客の皆さんの意見も活発に出て、非常に喜ばしいことであった。
それにしても今回、疲れてる人に机上理論を説くのは大変ということが明らかになった。
机上理論は(そして筆者の論文のほとんどは)後半ダッシュ型の作品が多く、そもそも売りである論理の逸脱自体が聴衆にかなりの集中力を要求するので、聴衆が疲れきってそれに着いて来ないというのは正に弱点を突かれた感じだった。実際、前半部の趣旨説明をしているうちに一人また一人と、深遠なα波を輻射し始めるさまを手をこまねいて見ているしかなかった無念。桃太郎侍を40分見たところでチャンネルを変えられるようなもので、ああっ、これから言う「ゆる"っさん!」からが盛り上がるのに!って言えば判りやすいだろうか。
SF大会を机上理論PRのまたとない機会と捉えている筆者にとっては、年一回のこのチャンスを活かせなかったことは悔やんでも悔やみきれなくて、正直本稿も書く書くといいながら三ヶ月もその気にならなかったのは、失敗の原因をどこに置くかを明確に分析し、その対策を次回に活かしたかったからだ。
総じて言えば、苦い失敗という思いが強い。通算成績がやねこん完敗、ゼロコン辛勝ときてるから、今回惜敗という感じだ。点をつければ45点というところだろう。時間帯と知名度で最初から60点満点だったところに持ってきて、内容のセレクトで減点10、演者のチームワークで減点5というのが細目。(筆者達自身の落ち度から来る減点が少ないから惜敗だと思うんだよね。)
だが、今回光明が無かったわけではない。上述したように、観客の皆さんが公演中にたくさん突っ込みを入れてくれたことで、これは願ってもない傾向だ。というのも、これは普通の学会論文だったら失礼にあたるのかもしれないが、机上理論では弁証法的に面白いオチになることが多いので、大いに歓迎するところだからである。そして突っ込みを入れるだけでなく、「俺もやる!」って人が出てきてくれることを希望するものであり、爆笑しつつ啓蒙活動をすることこそ当会の理想とする姿なのだ。
そうそう、もう一つ明るい話題を付言するなら、持っていった論文集がディーラーズルームで完売したことだろう。渡辺によれば、財布から一円まで搾り出してやっと一冊買って行く人が多いコミケの客に比べ、「大会参加者は金持ちだ。」そうで、何冊もまとめて買っていってくれる人は我々には後光が射しているように見えたものだ。でも、これでロリコン論文を書く加藤がどんな奴かを世間に公表してしまったわけで、ちょっとだけ後悔している。(*_*)
ではまた来年の夏。熱い笑いを目指して頑張ります。
さて、ここからは論文集に載せるつもりは無いが、Webには載せようと思っている反省の内容だ。というのも、今回の失敗の責が必ずしも我々の力不足だけのせいでないこと、そもそも我々が頑張る以前の、観客の疲労と少人数にかなりの比率を占めていることがあり、これが何故起こったかを明らかにし、公表する形で残しておくことは今後のために無駄でないと思うからだ。
観客の疲労の理由は明示したとおりだから再言及はしないが、少人数だったのには二つの理由がある。言うまでもなく、机上理論学会の知名度が低かったこと、そして閉会式に被る企画時間だったことだ。言い訳がましいけれど、これはどちらも大会運営者側にかなり非があると思う。
一点目の知名度については筆者も肝に銘じているから、大会開催に先行して発行されるプログレスレポートに掲載する原稿には、毎年相当"変なもの"を用意するのだ。が、昨年の横浜大会での客集めに貢献したであろうこの方法は、あろうことか大会側が自主企画者側の送付原稿を"全て喪失"するという不備によって損なわれてしまった。(これはメールで追究して初めて公表してくれた。悪気は無かったのはわかるが、黙ってるこたないし、なくなってることがわかった時点でもう一号プログレ出すよう動くべきでしょ。あの時点でまだ時間あったんだから。)結局当日に配られたプログラムを見るまで自主企画に関しては一般にアピールする機会は皆無になったのだが、大会中にそんなのゆっくり読んでる閑は無いわけで、これでは自主企画全般は明らかに知名度の点で有名企画に負けるだろう。仕方ないから大会中にチラシ配ったり名刺交換で逐一宣伝に努めたが、企画に顔出してくれた人数が蟷螂の斧だったことを明示している。
二点目の企画時間については筆者が"ビッグネームの企画とバッティングしない時間にしてください"とお願いしておいたから、この時間に振られたのは仕方ないかもしれないが、前述したような当企画の性格(聴衆が元気じゃないと駄目)は薄々わかってたから、こちらから調整を願い立てする機会は欲しかったし、当然あってしかるべきだったろう。が、そもそも企画時間のプログラムが公示されたのは大会の5日前、しかもWeb上だけのことであり、社会人参加者が多くなって、開催期間中のどちらかの日に急用が入るようなことは十分考えられるから、こうした待遇の無神経さには正直頭に来た。(これも文句を言ったのだが、方針だったとあっさりかわされてしまった。有名人企画とかでは当然スケジュールを考慮するんだろうから、公平に楽しむ大会であることを考えればこれはいくらなんでも不公平だろう。)
客足の少なさと企画時間は、実は企画内容そのものにも影響を与えている。というのも、前回の横浜大会での盛り上がりと客足を期待して創作した机上理論の啓蒙ネタというのがあったのだが、予想外の反応の鈍さに、このネタの内容が説得力を持ち得なくなった事を痛感し、その場で急遽没にしてしまったのだ。没にしたのはそれだけではない。今回のSF大会では、前述したごとく各参加者に名刺を持たせるという企画があり、これはともすれば孤立しがちな各参加者同志のコミュニケーションを円滑にする非常に良いツールだった。で、これに共鳴した筆者は、この運動を推進することをテーマとした講演を考えていたのだが、エンディングに被る企画で"さぁみんな今から名刺を交換しよう"なんてこというのも馬鹿げているので、このネタもまた没にしたのだ。参加いただいた人には、後半時間が余ってだれてしまったこと幻滅された方もいたようだが、実はこれはこの二つのネタの没で40分近く持ちネタを減らされたことに起因していたのだ。勿論別のネタを用意しろと言われればその通りなので弁解の余地が無いが、名刺ネタを交換する必要に迫られたのは5日前、啓蒙ネタに到ってはその場で変更を余儀なくされた(僕は自分のやる気を維持するために、企画が失敗したときなど考えもしない(というか、そもそも思いつきもしない)ようにしていることが裏目に出ただけなのだが)のだ。新作として準備した同二稿が完成に半年かかっていることを考えると、用意された時間があまりにも短かったと言わねばなるまい。
正直、あの2時間のために筆者が費やす準備の時間は、他の企画とは比較にならないほど多いことは胸を張って言えるつもりなのだが、そうまでして用意した企画が大会側の不備で人目に触れるチャンスさえ少なくされたというのはかなり憤慨したことであった。実際にも筆者及び相方である渡辺の行った企画そのものはお世辞ぬきで結構手ごたえのあるもの(だらだらとつまらないインタビューを続けるだけの有名人企画よりは少なくとも濃い内容)を提供した自信があっただけに、その結果としてのこの惨敗に、大会終了後もしばらくは無気力状態が続くのを止めることが出来なかった(仕事はしてんだけどね)。今回の大会は企業参加企画がかなり盛り上がっていたので、SF大会そのものは順調に見えたが、当企画を含めて他の自主企画は総じて低迷していたように思う。これは上述してきたような大会関係者の姿勢にも一因がある気がするので、この点、大会関係者には反省してもらいたいところである。
でも、こうしたことにも負けないくらい面白い論文書けばいいんだけどね。(>_<)>
ほんとのおしまい
2001年度SF大会参加報告 その2
渡辺ヤスヒロ
SF大会担当の加藤から前述の様に報告がありましたが、同じく発表を行った身として私の方からも少々報告させて頂きます。
発表した内容に関しては内容が重複するので省きますが、結果的には成功に終わったと思います。机上理論学会の知名度も少々上がったようですし、机上理論学会が楽しんでいるのはこういうことだ、と言うことが分かって聞きに来て下さったお客さんも結構いました。(御期待に添えたでしょうか?)
前回のSF大会では立ち見が出るほどでしたので、期待もあり今回は前回より大きな場所での発表となりました。なかなか良いところです。二日目の最後の催し物と言う事で疲れ切った人も多かったのですが、そんな体でも聞きに来てくれた人がいるのは本当に嬉しい限りでした。途中、メインのエンディングが始まる以外に退場する人もほとんどいなかったこと、最後まで付き合って頂き、つっこみを貰えたことは机上理論学会員として至上の喜びの一つです。本当にありがとうございました。
机上理論学会はまだまだ活動を続けていく予定ですので、その名前を見かけたら是非参加して欲しいと思います。どんなことをやっていくのかは分かりませんが。
ちなみに背が高くてやたら腕を振り回していたのが加藤法之で、小さくて白衣を来ててナマイキなのが渡辺です。怒りや文句の攻撃先を間違えないよう宜しくおねがいします。
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