加藤法之
我々の世代が子供の頃にあったいろいろな文化が復刻されている。筆者は個人的に過去を顧みるのがあまり好きではないので、こういう物にはほとんど目を向けない。しかし、同僚の一人が昼を一緒に食べているときに、「コロコロコミックの大人版が出た。」というのを聞いて、珍しく当時のことをいろいろ回顧してしまった。
轟け一番とかおじゃまユーレイ君とか、コロコロ買ってるなんてほとんど1〜2年だったと思うのだが、結構覚えていることに驚いているのだが、その中でも一番記憶に残っているのはなんといってもゲームセンター嵐だろう。タイトーのインベーダーゲームの大ヒットから、ゲームセンターは今にも続く若い奴の溜まり場だが、黎明期にゲームを対決のテーマと決め、ライバルと点数稼ぎを繰り広げるこの漫画は(今は苦笑いするにしても当時は)とても燃えた作品の一つだったことは確かだ。
主人公である嵐はゲームを攻略する為にいろいろな必殺技を編み出すのだが、知名度No.1なのは、なんといっても正月に思いついたってエピソードまで覚えている“炎のコマ”だ。レバーをマイコンの計算速度よりも速く動かすことによって敵の動きよりも早く自分の操作機を動かすという技で、あまりに速く動かすから空気との摩擦で手から炎が出るというすごいものだった。
(当初は回すコマが高回転することによって炎が出るという設定だったと記憶するが、話が進むにつれ、手の軌道が燃えさかるような描写になっていったような気がする。)
炎のコマは、具体的にはどのくらいの速度で手を動かしているのだろう。今筆者はとても高価な機械を動かすことがあるのだが、知っている限りでその手の機械の持つ主軸の最高回転数は30万回転/秒だが、それくらいで回しても周りの空気は燃えない。そう考えると、この必殺技が如何に凄いかわかる。では、当時のCPUってなんだ。ためらわないことさ。じゃなくて、Z80くらいか。まぁそうと仮定して、調べてみると2〜5Mhzだったらしい。遅っ!! ということは、一秒間に500万回手を動かせば同等と判断する。確かにこれなら30万回転より速いな。漫画中の描写ではかなり大仰に手を振っていたから、一往復1mとしても500万m=5千km/h!! この時点で既に人工衛星のレベルに達している速度だ。人工衛星は空気の無いところだからその速度で飛べるのだから、大気中で炎が出ても全然おかしくは無い。
ちなみに現在のPCで使っているCPUはCORE2Duoで2GHzくらいだから、同様に計算すると200万km/hとなり、既に光速の2%近くにまで達しているのだが、ここまで来るとおそらく必殺技周辺では相対性理論の影響が垣間見えるはずだ。手からスターボウが見えるかもしれない。(まぁシリーズが進むと炎のコマはホントに光速に達しているのだが、質量問題やらに触れると訳がわからなくなるので、少し自重してもらっている。)
で、そうまでしてレバーを速く動かすことによって、敵よりも速く自機を操作するのだが、そもそもガタガタ振動させるだけで入力は受け付けるのだろうか。そんな筈はないと言ってしまうのは簡単だが、何らかの意味を見出すのが机上理論だ。ここでくじけてはならない。
筆者は、炎のコマによって嵐は、単に腕を高速に動かしていただけではなく、やはりなんらかの入力を行っていたのでは無いかと考えている。それは手の動作だけで可能になるもので無ければならない。ということは、やはりそれは0,1の情報ではないだろうか。
0,1の信号であれば、レバーの右を0、左を1などとみなして強引にビット変換を行って入力させるようにすれば、レバーは既に能力としてキーボードに類したものとみなすことができるのだ。となれば、そこからはもうハッキングの世界だ。嵐がゲームプログラムをどう書き換えようと自由だということになる。
嵐はゲームばかりしているのにそんなことできるのかと言われそうだが、ゲームなんでもござれの遊戯王ならともかく(後年はカードばかりだけど)、好きこそ物の上手なれとも言うように、嵐のゲーム好きはあくまでPCゲームなので、中身に詳しかったとしても不思議は無い。たとえゲーム電卓の回で、簡単な足し算さえ出来なかった彼だとしても、プルグラムのアルゴリズムは読み解いてしまうかもしれないではないか。なにせ作者は当時からコンピュータに詳しかったすがやみつる氏だ。その分身とも言うべき嵐に、その素養が無かろう筈が無い。
嵐は炎のコマで、01100101…と、せっせとレバーから信号を入力してハッキングをしていたのである。
...それって、インチキじゃない?
おわり
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