穂滝薫理
同じものを見ても、人によって感じ方は違う。手垢のついた例で申し訳ないが、コップに水が半分入っているのを見たとき、「もう半分しか残っていない」と思えば、悲観的な気分になるだろう。「まだ半分も残っている」と思えば、もう少しがんばってみようという気分になれる。歴史を通じて、苦しい状況にあったとき、「まだ半分も残っている」という考え方は、どれほど人々に勇気を与えてきたことだろう。どれほど生きる力を与えてきたことだろう。だから、ここでは、そうした“ポジティブシンキング”を実践する方法を考えてみることにする。
実際には、最も大きなウェイトを占め、かつ効果があるのは“言葉”だ。否定的なものの言い方をしないだけで、ポジティブシンキングは半ば実践できたも同然だ。例えば、なにか失敗したとき「オレはもうダメだ」と言えば、気持ちがふさぎ、本当にダメになってしまう。そこで「次は、成功してみせる」と言えば、前向きに生き、積極的に解決策も模索できるようになる。また例えば、会社で上司から無理な問題を押し付けられたとき、「私にはできません」と言えば、本当にできなくなるばかりか、自分の能力を疑われることにもなる。こういうときは、絶対に「できない」と言ってはいけないのだ。「こうすれば、できます」と、条件を付けてでも「できる」と言うのが正しい社会人の答え方だ。
そこで、「〜ない」、「〜せず」というような否定的な言い方を完全に廃し、勇気をもって明るく前向きに生きていくことを提案したい。
以下にポジティブシンキングな言葉の例を挙げる。
そうは問屋がおろす。
その手にのるぞ。
それは聞き捨てなる。
後悔先に立つ。
弘法筆を選ぶ。
背に腹を変える。
初心忘るべし。
君子危うきに近寄れ。
私の辞書に不可能という言葉はある。
人はパンのみで生きる。
罪を憎んで人も憎む。
雨ニモマケテ風ニモマケテ雪ニモ夏ノ暑サニモマケル……
飛び出せば車は急に止まる。
赤信号、みんなで渡っても怖い。
飲んだら乗る、乗るなら飲む。
核三原則。持ち、作り、持ち込ませる。
覆水盆に返る。
キジよ鳴いて撃たれよ。
etc.
いい感じだ。つらい世の中だが、私も、もう少しがんばってみようという気分になってきた。
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