巨人軍・最後の抵抗

加藤法之



 今年の巨人は弱かった。
 筆者は中日ファンだから、弱い分にはまったく文句はないのだが、それにしても弱い。リーグ五位なんて、筆者が覚えてる限り数える程しかない。一応言っとくと、その数えるほどってのは全部長嶋さんのときだ。世間ではそれでも名将と言われる。(客観的に見て、巨人における一番の名将は藤田さんだろう。ただあの人には華がない。悲劇。)
 大体筆者にとっては弱いの代名詞は阪神であるべきだった。これは確かに、現時点でこそ反論は認めるものの、ホンの4年ほど前までは、阪神ファン自体が納得するところだったろう。忘れもしない。7年ほど前に出張で阪神電鉄に乗ったときのこと。扉上部にある電光掲示板(次の停車駅なんかが表示される、あれ)の文面に、『巨人戦3連勝の永久保存版ビデオ、各駅にて販売中。』とあって、よっぽど嬉しかったんだろうなぁ。と微笑ましく思ったものだが、阪神とはもともとそういうものだったのだ。
 ところが今はこの立場に完全に巨人が位置している。阪神には連続で負け越しだし、それどころかどころか、全球団に負け越さないのが精一杯だ。
 この責任は何処にあるのか。松井がメジャーに行ってしまっこともある。FAで引き抜いてきた選手が歳くってきたってこともある。若手が出ることができないから経験が伴わないってこともある。とまぁいろいろあるんだけども、こういうことはだいたい、監督のせいにされる。
 だいたい先にあげた藤田さんなんか、あれだけ勝ってるのに、自宅にまで嫌がらせがくるほど負けた次の日は酷かったそうだ。まぁ長嶋さんを降ろして据えた監督だったから、頭のおかしなファンがいたってことなんだろう。けど、そういうことなら、原さんを降ろして据えた堀内さんが、いったいどれほど追い詰められているのかは察するに余りある。
 幸い日本では、負けつづけて逆境に追い詰められた指揮官がなすべきしきたりというものがある。怪人化して、戦いを挑むというもので、仮面ライダーという番組のシリーズに出てきた対抗組織のほとんどの幹部がこれを行っている。起死回生を目論んで行うこの行為は悉く失敗するのだが、それでも見ている我々に、潔さと強さ、格好よさという印象を残していった。
 巨人も、卑しくも軍を気取るのならば、このシステムを採るべきだろう。あっさりと監督を降ろされた堀内さんは、簡単に辞任要求を承諾すべきではなかった。3年契約なんだから、いかにダメでももう一年頑張って、それでもダメなら、残された最後の決断として、怪人化して決戦に挑むのだ。幹部の...いやいや軍の監督の華道とはそうしたものだろう。
 では誰に挑むのかって? そんなもの決まっているだろう。
 ワタナベさんだ。

追伸 これを書いたあと、例の日本シリーズにおいて阪神はロッテにこてんぱんにやられてしまったわけだが、筆者などは「これぞ阪神!」と膝をうったものだ。

編注:本稿は2005年冬に投稿されました。掲載が遅れまして申し訳ありません。



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