木賃ふくよし(芸名)
皆さんは、TVのヒーローを見ていてこんな疑問を抱いた事はないだろうか。
「必殺技の名前を叫んでいる間にやられないのか?」
必殺技だけではない。合体の瞬間、変身の瞬間。往々にしてヒーローは隙を作りまくっている。この間に敵は何をしているのだろう。筆者が敵の改造人間なら、間違いなくこの隙に攻撃する。筆者が敵の戦闘員だったら、この隙に逃げ出す。それをしない、させないのは、一体どうした理由があるのだろう。
「それが不文律」という説がある。いや、不文律ではなく、回覧にしてあるかも知れないが、とにかく鉄の掟があり、ヒーローの必殺技、合体、変身中には絶対に手を出してはならないというモノがあるのではないか?
しかしこれは、いわば紳士協定であって、遵守すべき内容ではない。しかも、紳士協定はお互いの利益を守るために存在する。言ってしまえば、破った者勝ちになるならば、破ってしまえ、となるのが当然だし、そもそも悪の組織が損をする一方的な紳士協定などは存在し得ない。
また時折、敵の中に「あの隙を狙えばいいのだ!」なんて事を思い付くのがいたりする。しかも、高い確率で途中までは成功する。
つまり、必殺技の隙は本当に隙なのである。筆者が敵組織の幹部なら、一度隙を狙って失敗しても、それなりの結果が出せたのなら、続けて二度三度と同じ方法を繰り返すだろう。それが出来ない理由があるとしか考えられない。
その理由とは一体何なのだろう。
例えば、必殺技にしろ変身にしろ、それに必要なエネルギー量は相当な物だと言える。そのエネルギーが収束している場所に攻撃を加えたら「危ないじゃないか!」という考えはどうだろう。
コレならば敵が指をくわえて見ている理由に納得がいく。かなりの割合で辻褄は合う。イケるんじゃないか?
イヤ待て。敵の中には特攻を掛けてくるような者も少なくない。だったら好都合じゃないか?それだけじゃない。「地球支配」を目的としているならともかく、「地球を死の星に変えてしまうのだ!」ってな事を言ってる敵も少なくない。なおさら好都合じゃないか?
では一体、何が原因だ?
合体や必殺技モーションの「邪魔をする敵」は、放映中に1回程度しか出てこない。良い作戦を採っているにもかかわらず、である。
つまり、多くの敵には、「邪魔をする」に足りるだけの能力がないのではないだろうか。
逆を言えば、変身や必殺技の最中には、ヒーローに何らかの力が作用しているため、それに近付けない・攻撃できないという訳だ。だとすれば(作中にそんな説明などない場合がほとんどだが)その力が作用している間でも行動できる数少ない敵が「モーションを邪魔できる」事になり、その他の敵は「邪魔をすればいい・したい」と思っていても出来ない。コレならば辻褄は合う。
では、モーション中のヒーローにはどんな力が働いているのだろう。
そう。主人公たちが、実はものすごい高速で動いているとしたら?TVの前のみんなには超スローモーションでお見せしているけれど、本当は超高速で動いている。だとすれば敵の攻撃が介入できないのも道理。
だが、これだと、戦闘中に「は、速い・・・!」とか「こんなモノで速いだとォ!? 笑わせるッ!」とか「まだ速く動くのかッ!」なんて掛け合いは存在しない。技が見えないぐらいに速いのに、モーションは見られているけどホントは速いなんてどう考えてもおかしい。
正解に近付いたような気はしたが、また振り出しに戻ってしまったのか? いや違う。例えば某宇宙刑事の場合、変身を1_秒で完了するとか何とか。何だか凄いようだが、やはり妙だ。変身こそ1_秒で完了しているかも知れないが、変な変身モーションを取って「蒸着ッ!」と叫ぶまでにはかなりのタイムロスをしているのである。1_秒の蒸着が台無し。
これは一体どういうことか?
これを考えた時、見つかったのである。あった。ただ一つだけ全ての辻褄が合う理由が。
時間が遅滞しているのである。
主人公が必殺技モーションだの変身ポーズだのを取っている間、主人公以外の時間が遅滞している(もしくは止まっている)のだ。
まさにマトリックス効果(映画「MATRIX」で重要なシーンがスロー再生される。正確にはジョン・ウー効果)である。
主人公は激しく時間を遅滞・停止させる力を持っているものなのだ。
考えても見れば、「ジョジョの奇妙な冒険」でも、時間を操るのはほとんど主人公クラスか敵のボスクラスである。
スポーツ漫画でも必殺ブローや魔球を放つ時はスロー効果が掛けられたりする。それだけではない。敵を倒す時は一瞬だけど、主人公のピンチには「次週に続く」なんて一週間も時間を止めたりするのだ。最強。コレ最強。
しかもアレだ。周囲の時間を止めて自分だけが動くとなると、エネルギー消費は半端じゃないだろうし、時間の流れが違う分、間違いなく他人より寿命が短くなる。
必殺技をみだりに使えない理由までフォローしているではないか。
間違いない。必殺技や合体や変身は時間を止めているのである。
ドラゴンボールで、「精神と時の部屋」(時間の流れが365倍)にて修行をすれば強くなるというのは、まさに時間を操る修行ではないのだろうか。界王様が駄ジャレを言わせた真意だって、「駄ジャレは周囲の時間を止める」効果があるからではないのだろうか。
「駄ジャレを言った途端、周囲の時間が止まった」 そんな経験はありませんか?
|