例えば十億

渡辺ヤスヒロ



「10億円渡すから別れてくれ」と言われたらどうするか。
熟年離婚華やかな昨今、時に話題に上る例え話である。先日この話をしたのも酒の席なので、そう言った場所では良くある話題なのだろう。
遺産目当てで結婚していたり、ちょっと派手な遊びをしても出してくれる程度のお金持ちと付き合っていたりしている若い人ならどうだろう。10億円となると結構な大金である。目的の遺産と見比べても決して見劣りする金額ではないだろう。すると10億円貰って他の恋人でも見付けたり遊んで暮らしたりする選択をするのも分かる。
では長年連れ添った古女房を10億円で切り捨てられるのか?「1万円でもいい。いやむしろ払う。二度と帰ってこない様に地獄の果てに連れて行ってくれ。」と言う声も聞こえないわけではないが一応無視することにする。情の問題と考えるとそれまで過ごした何十年間+今後の何十年間を10億円でなかったことに出来るのかという議論である。10億くらい別れなくても出してやると言う気概があれば少しは惚れ直されるかも知れない。
女性側としてはどうなんだろうか。女の人と言うのは結構冷静で計算高かったりしそうな気もする。「定年まで働いてもウチの宿六じゃ10億は無理だし、そっちの方がなんぼかマシだわ。」と普通に考えそうだ。
さてそれはそうとして10億円。宝くじの当選金の何倍かの金額である。贈与税など関係なく貰えるとしてこの金はどうなんだろうか。
大切に使い続けて死ぬまで持つのか、増やしたりする必要があるのか、どの程度の贅沢が出来るのか。
ゼロ金利が解除されたとは言え超低金利な時代に利子だけで食べていくことが出来ないのならと株式等の投資に掛ける事も考えるかも知れない。むしろそれが普通と言う気もするがここでは10億円を食い潰していくことだけを考えてみる。
人の欲というものは底無しということは知られている。10億円貰って大切にしようと思っている人が一日目に100円しか使わなかったとしても10日目には1万円使っていることだろう。そして加速度的にどんどん増えていくわけだ。それをグラフにしてみるとこんな感じである。


図1 1日の使用金額の推移
図2 積算金額


なんと、使った金額が10億円越えるには311日しか掛からないのだ。モニターをぶん殴りたくなる気持ちも分かる。

「1年足らずで沈んでしまうと言うのか?」
「日本は一気呵成に沈んでいくんだ!」(日本沈没より)





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