ヒーロー研究の落とし穴

渡辺ヤスヒロ



2005年1月7日の新聞を見ていて気になる記事があった。
「ヒーローものゲーム、子供の攻撃性増加の可能性」
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20050107ur01.htm

概要を引用すると以下の通り。

悪者が暴れまわるテレビゲームより、かっこいいヒーローが敵を倒すゲームの方が、むしろ子どもの攻撃性を高める可能性があることが、お茶の水女子大の坂元章教授らのグループ研究で明らかになった。
 坂元教授らは2001年11月から12月にかけて、神奈川県や新潟県などの小学5年生を対象に、よく遊ぶテレビゲームと攻撃性に関するアンケートを実施、1年後に同じ児童に追跡調査を行い、周囲の人への敵対心を表す「敵意」など、攻撃性に関する五つの指標について、その変化を調べた。
 6校の児童592人についての調査結果を分析すると、知的だったり、見た目がかっこよかったり、魅力的な特徴を持つ主人公が登場し、攻撃するゲームでよく遊んでいた児童は、1年後に「敵意」が上昇していた。「ひどいことをした悪者に報復する」という、暴力を正当化するゲームでよく遊んでいた児童も同様に「敵意」が高くなっていた。
 これに対して、攻撃回数が多い、たくさんの人を攻撃するなど、暴力描写の程度が高いゲームで遊んでいる児童の場合は、研究チームの予想とは反対に、むしろ攻撃性が低下していた。
 この結果を坂元教授は「かっこいい正義の味方だと、プレーヤーが自己同一視しやすいため」と分析している。

まあ待て。まずは2001年のヒーロー物が何をやっていたか良く思い出す必要があると思われる。
もちろんキャラクター商品としてそのヒーロー物のゲームが出ているからだ。
2001年 仮面ライダーアギト 百獣戦隊ガオレンジャー ウルトラマンコスモス
2002年 仮面ライダー龍騎 忍風戦隊ハリケンジャー
(セーラームーン、グランセイザーは2003年以降)

11月から12月というアンケート時期にはライダーと戦隊物は最終回が近づいている時期であることも考慮するべきである。
仮面ライダーアギトはイケメンライダーの筆頭とも言える賀集利樹を始め何人かが出ていてヒーロー物の対象が子供から主婦層に移った頃である。ストーリーは分かりにくいというかなぜ怪人が出てきて戦うのか説明がほとんど無く主人公も記憶がなかったりする。最終回が近づいてもなかなか説明がなく、見ている方がハラハラする。が、子供としては多分毎回同じくらいの時間に戦いがあったりするので見易かったのではなかろうか。
仮面ライダー龍騎と言えばライダー13体が殺し合って最後の一人になると望みがかなうという殺伐としたストーリーで、出てくるキャラクタもまた変なのが多い。悪人を倒すというより欲望のために他人を殺すわけで子供向け設定とはどう考えても思えない。そうでなくても子供が見たらトラウマになりそうな話も少なくないと言えなくもない。
そしてウルトラマンコスモスと言えば怪獣保護ウルトラマンという特殊な立場が記憶に残っている、わけではなく主役を務めた杉浦太陽氏の暴力事件による打ち切り(後に復活)が有名。小学5年の子供にどう説明するかという以前に氾濫した情報からショックを受ける子供も続出したと考えられる。
ハリケンジャーは戦隊物の中ではギャグ系で支離滅裂な話が多い。しかし楽しんで作られていたからか面白さのレベルは高め。ゲストキャラに過去の特撮ヒーロー物の出演者を毎度出すなどのスタッフや特撮ファン向けの遊びも多い。がそれはもちろん子供を無視しているとも言える。

そんなヒーロー物を見ている子供がまともでいられる(正しい精神的な成長を望める)わけもないのは無理らしからぬことだろう。
>この結果を坂元教授は「かっこいい正義の味方だと、プレーヤーが自己同一視しやすいため」と分析している。
確かにイケメンヒーローが(ママ層に)モテモテだけど、これを子供が自分と同一視していこうとするのかどうか難しい気がする。母親を取られたとしてヒーローに敵意を感じ兼ねない。

考えたてみらヒーロー物を特撮(実写)に限定するべきではなかった。アニメも当然視野に入れなくては。
当然、テレビ放映されていてもゲームとしてメジャーでない場合もあるわけで、当時売れていたヒーロー物ゲームは何かも調べることも必要になる。

とは言っても今の特撮ヒーロー物を見て子供がどう感じ、どう育つか。特撮製作陣は受ける受けない以上にそこも考えてしかるべきなのである。当然ではあるが。





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