藤野竜樹/b>
国家公務員が退職してから、己の所属していた省庁と関係のある企業団体に再就職することを天下りという。そうした人物は元いた省庁に顔が利くことから、雇用する側にメリットをもたらずという名目はある。とはいえ、数年雇い入れるだけで億単位の金を給料及び退職金によって提供しているのだから、これがメリットになっているのか俄かには首を傾げたくなる。だが結局こうした企業も、銀行や道路公団など、国によって守られるもしくは運営される組織なのだから、法律で守護されているという利益を得る特権的旨みがあるわけで、やはり関係省庁に擦り寄っておいて損はないわけだ。
かくておぞましい権欲のスパイラル構造が垣間見えるため、この言葉に対して嫌悪感を催す人が多いのだが、このほど天下りの意外な効用が見つかり、注目されている。
都立さいたま病院婦人科の下野よし子医師は、数年前から通院してくる患者の症状に、ある相関があることに気付き、不思議に思っていた。待合室で順番待ちをしている患者の中には、順番がまだこないううちに帰ってしまう奇特な人もいる。えてしてそういう人は、気分が戻ったとか何処かしらの痛みが治まってしまったといった、一過性の体調の悪さが原因になっているだけのことが多いのだが、中にはどうにも本当にスッキリとした顔をして帰っていく人がいる。
ある時こうした女性の一人にたまたま廊下で出くわした下野医師は、「どうしたんですか?」と尋ねてみたところ、「便秘に悩んでいたのだが、TVのニュースを見ていたら急に便通をもよおし、トイレに行ってきてスッキリした。」という。この奇妙な発言に対し、医師はまず同女性が見ていたと証言したニュース番組を特定してその日放送分のビデオを入手、女性と同様便秘に苦しんでいる女性患者5人に見せてみた。するとどうだろう。ニュース後半に差し掛かったとき、5人中3人が途中で席を立ち、いそいそとトイレに立ったのである。これはと思った医師は更に実験を続けたところ、どうやら番組中、元労働省事務次官である田中一郎氏が、天下り先の株式会社リタルートへの利益優先疑惑を報じたニュースに反応しているらしいことがわかった。
「これは天下りという言葉に駄洒落の意味で反応しているだけではなく、上手い汁を吸っている人間に対する憤りが、下腹部への力の集中をもたらし、その相互作用が便通を及ぼすのではないか。」医師は言う。
これに気を良くした医師は現在、様々な天下りの情報を便秘の患者に見せる一種の心理治療を行い、効果をあげている。道路公団への天下りによって便秘が直ったという30代女性は、
「とても驚いています。他人のお金を貪る寄生虫のような人たちのことが、こんな形で私たちに役立つことがあるなんて。今では彼らのことを考えるだけですっきりできるようになりました。」と嬉しそうだった。
医師はこれに留まらず、バンジージャンプ、ライン下り、マハラ共和国反政府主義者の投降、テトリスなど、さまざまな“おちもの”に更なる便秘への効果をもたらすものがないかを研究中という。
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