世紀末最強伝説

木賃ふくよし(芸名)



 男に生まれたからには、最強を目指す。
 板垣恵介に言わせれば、それが男と言うものである。
 最強とは何か? 刃牙の世界でならば間違いなく、範馬勇次郎だ。間違っても主人公である刃牙ではない。
 MMRによるキバヤシの寝言が外れたお陰で、ジャッジメント・デイもX−DAYもインディペンデンス・デイも訪れなかった訳だが、世紀末に地球が核の炎に包まれていたら、果たして、最強の男は誰であっただろう?

 我々を魅了して、今なお興奮冷めやらぬ名作「北斗の拳」
 新世紀になった今だからこそ語る事の出来る、世紀末最強の男は誰か? そして最強の拳法は何か?
 「北斗の拳」史上には、多くの拳法が登場する。北斗、南斗、元斗、華山、泰山などなど。必然的に主人公が使う北斗神拳、及びケンシロウが最強と言う事になるが、これは「主人公」という特殊なスキルを持っている為、除外させて頂く。そうなると、やはり次に挙げられるのはやはり、世紀末覇者拳王ことラオウであろう。事ある度に、ケンシロウが引き合いに出す男ラオウ。数々の漢イズムを我々に見せ付けたラオウ。ラオウ最強説は捨て難い。
 だが、それは果たして真実なのか? まずは、その辺りから検証して見よう。
 ラオウ最強説としては、カイオウより強かったと、ケンシロウが証言。また、カイオウ本人も認めている。
 元来、ラオウ襲来に向けての修羅の軍勢だった事を考えても、修羅は誰一人としてラオウに勝てなかった事になるのだ。ほぼ最大最後の敵であるカイオウより強かったとなると、ラオウの強さは相当なものだ。
 ただし、カイオウ他北斗琉拳一派は、魔界モードに突入しているが為の強さであると言える。
 つまり、通常モードで比べるなら、ラオウはカイオウよりも圧倒的に強かったという事になるのだ。
 カイオウは「修羅の国編」最強である為、修羅及び、北斗琉拳は全てカイオウ以下であると見なそう。つまり、いくら義足に満身創痍とは言え、一介の名もない修羅(砂蜘蛛)にやられたファルコ&元斗皇拳も、ラオウには勝てない事になる。
ラオウ≧カイオウ(魔界)>カイオウ>ヒョウ>ハン>他の修羅>ファルコ(義足かつ満身創痍)

 いや、だが、ここで計算が狂い始めるのだ。ファルコは、ラオウと互角と目された男なのだ。刺し違える代償として、ラオウに脚を差し出したファルコ。
 ファルコとラオウが互角の強さ。
 これはファルコの勝手な思い上がりか? あるいは、ラオウが単にファルコの男気に打たれただけなのか?
 そうではない。ファルコはまさに、ラオウに匹敵するであろう強さを持っていた。義足・満身創痍でなくば、少なくともハンには匹敵しよう。
ラオウ≧カイオウ(魔界)>カイオウ>ヒョウ>ファルコ(義足)≧ハン

 そう考えると合点が行く。カイオウは、一対一では絶対的にラオウには敵わないとみなし、ファルコ(義足・満身創痍)級の戦士を量産した。砂蜘蛛数と呼ばれる、名も無き修羅があれほど強かった理由はここにあった。カイオウは、数の理論で勝とうとしたのである。それが、修羅の国なのだ。
 つまり、そう。このラオウと言う男、強いには強いが、桁外れに強い訳ではなかったのだ。我々はラオウの漢イズムに魅せられたが為に、ラオウの強さを過大評価し、見誤っていたと言わざるを得ない。
 例えばトキ。ラオウは唯一、トキのみを強敵と認めていたが、それ以外にも強敵と呼んで差し支えない存在がいたのである。
 養父リュウケン。ラオウを今一歩まで追い詰めながらも病に負けた男。
 聖帝サウザー。北斗最強がラオウなら、サウザーは南斗最強の男。
 山のフドウ。ラオウを唯一、恐怖させた事がある男。
 雲のジュウザ。ラオウが認めた男。
 ラオウの部下ザク。特殊条件下ではあるが、ラオウを矢で射ることが出来たのはザクとレイだけ。ザクは実は強かったのかも知れない。同名のモビル・スーツとは訳が違う。
 ラオウに肩を並べんとする男達がいる。条件が条件であれば、勝っていたかも知れない男達がいるのだ。そう考えた場合、ラオウは手の届かないほど雲の上の存在ではなかった事になる。

 ここが問題だ。拳王の存在は偉大だが、我々の求める「最強」とは、そんなちっぽけなモノなのか。
 我々はやはり、僅差ではなく圧倒的な強さを持ってこそ、最強と認めるのである。
 そこで、強さの尺度をラオウではなく、ケンシロウに変えてみよう。
 いかにケンシロウを苦しめたか。それを基準に色々な人物を挙げてみよう。
 関東の覇者KINGことシン。以下、南斗六聖。
 泰山天狼拳のリュウガ。
 雲の如き無形の我流ジュウザ。以下五車星。
 カサンドラのウイグル獄長。
 アミバ流北斗神拳のアミバ。自称北斗神拳正統伝承者ジャギ。
 催眠術使いのゲイラ。
 ケンカ拳法のアイン。
 親父こと牙大王。
 羅漢仁王拳の巨漢デビルリバース。南斗爆殺拳(違います)のジャッカル。
 でぶの地位を最強にまで高めたハート。
 最初の犠牲者ジード。
・・・数々のツワモノがいる。
 ケンシロウと戦う事のなかった人物(ユダ、ジュウザなど)は戦った相手を尺度に設定。及び、組織の下位幹部に当たる人物は削除することにしよう。つまり、シンの部下ハートはシン以下。ウイグル獄長やリュウガは、ラオウ以下と判断される。ネタとしては引っ張りたいが、同様の理由からジャギ、アミバ、ユダにも涙を飲んで消えてもらわなければならない。
 また、知略の最強ではないので、リハクやジャッカル(腕っぷしは意外に強いみたいだが)は省かせて貰う。また、残念ながら、歩くのも面倒臭いゲイラも除外。ケンシロウに事もなく捻られたアインは問題外。
 ある意味では最強と言うより最凶の女だが、自身が戦う事のなかったユリアも戦線を離脱してもらおう。残るのは誰か。
 シン、レイ、シュウ、サウザー。
 シュレン、ヒューイ、フドウ、ジュウザ、
 デビルリバース、牙大王、ジード。
 この中で、ケンシロウを苦しめる事さえなく葬られたジードはアウト。
 当然ながら、ラオウに一撃で粉砕されたため、シュレンとヒューイも脱落。
惜しいかな、切迫しながらも敗北したフドウとジュウザにも消えていただく。ここに、五車星墜つ。
 ラオウに対し、文字通り一矢むくいる事しか出来なかったレイも、やはり最強位には遠い。ケンシロウを倒した功績を持つシュウはどうだろう? 勝ったと言っても幼小時代の話であり、結果として視力を失い、最終的にサウザーに勝てなかったシュウを最強とは呼び難い。残るは、シン、デビルリバース、牙大王、サウザー。
 真っ先に消えて頂くのは、牙大王である。理由は説明するまでもないだろう。息子の数が少なくて、人質もいなければ、まず、勝ち目がない。
 残るは、南斗聖拳(南斗孤鷲拳)のシン。羅漢仁王拳のデビルリバース。南斗鳳凰拳の聖帝サウザー。シンは、ケンシロウにも勝っている。そして、ケンシロウに敗れつつも、ケンシロウの拳法では死ななかった数少ない男だ。六聖の一人でもある訳だから、少なくともレイ、シュウ、ユダ級の力を持つ事は間違いない。まして、どんな深手を負っても、あっさり治ってしまうケンシロウの胸に、七つの傷を刻み付けた男である。
 デビルリバースは、過去700人を殺し、死刑執行されること十三回、最終判決懲役200年。殺した数だけで言えば、200に届かない修羅どもを軽く凌ぐ。100より先を数えられないハン様だったらエラい事になる。(違います) デビルリバースも数えられない雰囲気だが・・・。
 サウザーは、慈母星を除いた南斗の将であり、自他ともに認める南斗最強の男。しかも、心臓が逆付きという特異体質付きで、ケンシロウにも勝利している。
 ここでの問題は、サウザーが「南斗最強」の男と言う点である。宿命が将星だと言う意味では最強なことは間違いない。拳法としては、間違いなく南斗最強だろう。
 だが、個人としてはどうだろう。シンをサウザーの格下と見なし、除外せねばならないのか?
 いや、サウザーは拳王伝説が崩壊するのを待ってからの登場である。肉体の秘密を知るトキをも恐れていた。実質、北斗を恐れていたのだろう。特異体質でなければ、案外、ひとひねりで終わりそうだ。
 そう考えると、サウザーは欠点が多く、あるいはシンが倒れなければ将星になる事もなかった可能性さえ浮上する。何故なら、シンは一度たりとも南斗孤鷲拳の名を出さず、南斗聖拳を名乗り、KINGを自称しているのだ。
 つまりこれは、俺こそが南斗108派で最強の自負だと受け取る事が出来る。
 本来の将星ならば、この暴挙を許すであろうか。否。サウザーは、シンが倒れるのを待ってから行動したとしか思えない。
 逆にシンは、ラオウの手下であるジャギにそそのかされただけで、ラオウを意識せずに関東の覇者となっている。流石はKINGと言う訳だ。

 ユリアを除いた六聖の強さを測ると、新血愁+心霊台のレイに負けている、ユダが間違いなく最弱。
 ケンシロウとの対比で言うと、レイ>シュウもほぼ確定。つまり、
 シン≧サウザー>レイ>シュウ>ユダ
 と言うのが南斗の力量関係となる。
 南斗最強の男は、主人公ケンシロウ最初にして最大のライバル、シンだった事になるのだ。
 さて、話を戻そう。デビルリバースである。
 北斗「神」拳に対して、「悪魔」の化身デビルリバース。中国拳法である北斗神拳に対して、インド拳法の羅漢仁王拳。
 登場が一度切りなので印象は薄いが、南斗、元斗、北斗琉拳に匹敵するバリューだと言えよう。少なくとも、華山や泰山よりは扱いが上なのは間違いない。
 そして、恐るべきはその肉体。いくら拳王様がオーラを纏おうと及ばぬほどの巨体。目測では最低でも17mある。ラオウやカイオウのようにデビルリバースが気を放っていたとしても、10mは超えているだろう。ハッキリ言って、相手がフドウでも踏み潰せる。しかも、図体に似合わず素早い。
 特筆すべきは、ケンシロウに転龍呼吸法と北斗七死星点という二つの技を使わせた点である。(転龍呼吸法の用途は今一つわからないが・・・)
 これらから推察するに、デビルリバースは北斗史上でも最強クラスである事は間違いない。
 北斗史上最強の男は誰か? やはりラオウか、それともシンか、あるいはデビルリバースか!?
 だがしかし! 重要な点を見逃していた。
 そう。デビルリバースは投獄されていたのである。あんな化物を誰が捕まえたというのだろう?実はデビルリバースは、法に従順で、大人しく捕まって、素直にムショ暮らしを送っていたが、暗闇の中でジャコウ様ぐらい性格が歪んだと言う説は捨て置く。また、ジャッカルに騙されるぐらいの知能指数であった為に、騙されて閉じ込められたと言う説も捨て置く。捨て置かせてくれ。

 そうすると、誰かが捕まえた事になる。つまり、デビルリバースより強い人間がいた事になるのだ。その相手が誰であれ、>デビルリバースという図式は成り立つ。筆者は南斗双鷹拳のハーン兄弟を倒したファルコと同様に、ファルコが倒す→アインが閉じ込める。という形式だったと推察している。
 この辺りは憶測でしかないが、この仮説をもとにすると、ファルコ>デビルリバースとなり、残るのは、ラオウとシンのみ。

 ラオウとシン。果たしてどちらが強いか。
 問うまでもない。やはりラオウなのだ。
 ケンシロウはトキの「柔の拳」あるいは、リンを殺せる「非情」を身に付けてから初めて、ラオウと引き分けている。
 シンに勝ったのは「執念」だけしか身に付けていない、それ以前の事。言うまでもなく、ラオウはシンを凌駕していたのだ。
 やはり、世紀末最強の男はラオウ。それでいいのか。
 どんなに考えてもそれ以外の結論は出ないのか?
 いや、我々は一人、最強の人物を忘れている。
 最強の人物は、この男をおいて他にいない。
 大佐。そう。カーネルと呼ばれた男。
 このカーネルこそが最強の男なのである。理由は言うまでもない。彼は「世界最強」の殺人拳である「南斗無音拳」の使い手なのである。

 最初の強敵であったKING編終了後、すぐに登場したために、後から出て来た連中、組織の方が強いと思い込まされている人間が多いが、決して、そんな事はない。特に、この世界では大口を叩く雑魚ほど、すぐやられるため「世界最強」を自称してしまったカーネルも弱いと思われがちである。だが、そんな事はない。
まず、彼の率いる組織、GOD LANDこと神の国GOLAN。名前からして凄い。神の国発言問題は勿論、GOLANと言う略称は、スペルからDを抜いている。つまり、ランクDの人間を許さない。まさに選ばれた者の国と言う意味だと言えるだろう。かつての所属組織は、陸戦隊レッドベレー。バーのマスター曰く、「一人で500人は殺せる」らしい。ハッキリ言って100人レベルで騒いでいる修羅の国程度ではない。もう一歩踏み込めば、700人のデビルリバースにも追いつこう。

 一見、ケンシロウはGOLANの構成員を難なく倒しているように見えるが、しかし、そうではない。ケンシロウは床にあった武器を使用して戦っているのだ。つまり、素手での戦闘は困難だと結論したのだろう。まして、相手にしていたのは、倒れた相手に止めもさせない訓練生だったと言う事実。
 残念ながらケンシロウに軽くあしらわれてしまったマッド軍曹(サージ)も、なん千人と言うゲリラを殺している。単純に殺した数だけなら修羅の十倍以上。
 つまり、レッドベレーの一兵隊の基本能力が、修羅を凌いでいると考えざるを得ない。マッド軍曹があれほど弱かったのは、恐らく、彼が教官で、教え方がとても上手だったという事になる。従って、彼は弱くてもよいのだ。
 つまり、戦闘専門の熟練者ならデビルリバースを凌いでいるだろう。その証拠として、カーネル亡き後、ケンシロウは「神の国の後片付け」をしている。
 敵の大将を倒した後、その後始末まで請け負ったのは、後にも先にも、これ一度だけ。しかも、バットの言葉から、ケンシロウは数日以上を掛けて後始末したと推察できる。GOLAN構成員が一筋縄でいかなかった証拠だ。
 また、GOLAN構成員の団結力も偉大で、あれほどの漢イズムを見せながらも、拳王が敗れただけで崩壊する、拳王軍とは雲泥の差だ。
 つまり、そのリーダーであるカーネルともなると、実力もカリスマ性も、ファルコ以上だったと言わざるを得ない。カーネルが爆弾に狙われたら、構成員は肉の盾となって、カーネルを守っただろう。
 そのカーネルが使用する拳法は、南斗無音拳。まあ、あらゆる殺人の手段を研究しつくし、中国拳法を得意とするカーネルが「世界最強」だと言っているからには、六聖を除いた南斗102派では間違いなく、拳法自体が南斗最強なのだろう。あるいは、紅鶴拳ぐらいは凌いでいるかも知れない。
 鉤爪やブーメランを使っているが為に、弱いと勘違いされているが、それも違う。れっきとして、サウザーの部下が南斗双斬拳で武器を使用しているのだ。衛士ライガとフウガだって変な糸を使った。強ければ、武器の使用も厭わない。それは、ジャギズムに通じる。いや、ジャギは弱かったが。
 また暗殺術、軍隊格闘術としては、とにかく掛け声がやかましい北斗神拳(暗殺拳を自称)より、実戦向きだと言える。しかも、カーネルは超能力者と呼ばれるほどの、能力者であった。そう。気配を消す程度のことは多くの戦士がやったが、相手の動きが読めるのは、強力なアビリティだと言える。
 もしカーネルがその気なら、出会い頭、ケンシロウの背後を取った時点で勝負は終わっていた可能性さえあるのだ。それだけではない。劣勢に立たされた瞬間も、振り向いたケンシロウではなく、ケンシロウが助けに行く事を見越して、リンを狙った。この先見の明はまさに超能力者。
 また、ケンシロウの行動からも、カーネルの強さを測り知ることが出来る。
 「かつて知らぬ間にこれほど近くまで獲物に接近を許した事はない」
 と、言わしめた。強敵(とも)以外を、ほとんど誉めた事のないケンシロウが、である。
 ケンシロウは蹴りを避け尽くされ、その頬とリストバンドを切られた。これほどまで優雅にケンシロウの攻撃をかわした男はいない。間違いなく、ラオウの攻撃をゆるゆると流したトキに匹敵するだろう。最後には、腕に槍を突き刺されている。フドウの子らを守った時に矢を受けた以上のダメージだろう。
 その為か、ケンシロウは大佐を倒す事に、これまでになく、真剣に取り組んでいる。ブーメランを避けるのに空極流舞を使用。一切の気配を消し去り、攻撃。その時にわざわざ、秘孔・瞳明を突いている。最後に北斗壊骨拳と、かなり慎重な姿勢をしめしている。平気で無謀な行動をするケンシロウとしては、後にも先にもない警戒の仕方だ。

 哀しいかなアニメ版においてカーネルは、シンの部下にされている所が涙を誘うが、同じくケンシロウに服を破る暇も与えず(アニメ版使い回しフィルムを使用していない!)、そればかりか、空極流舞、「北斗百裂拳」、秘孔・瞳明、北斗壊骨拳、とケンシロウに四度も技を使わせている点では、デビルリバースの倍は強いという計算になる。
また、ケンシロウは「たしかに、きさまは、ずばぬけた能力の持ち主ではある」と、誉めている。強敵(とも)以外をこれほど絶賛した事があろうか。
 そして、カーネルは他の悪党どもとは一線を画した思想を持っており、ただ己の為に天を目指した男一匹ガキ大将や、たかがユリア一人の為にサザンクロスを作った偏愛者、オウガイを弔う為だけに聖帝十字陵を作ったアダルトチルドレン、ラオウ襲来に備えて修羅の国を作ったブラコンなどとは訳が違います。
 彼が蜂起したのは、国家の堕落ゆえであり、統一された強固な思想、強靱で美しい民族による、最大最強の国を建設しようとした偉大な男である事は間違いない。
 自らの利権の為でなく、世界の平和の為に、彼はあえて修羅の道を選んだのである。それを他人任せにしようとしたリュウガなどとは格が違います。
 また、とにかく兄弟喧嘩の多い北斗史上で、カーネルは唯一、199X年核戦争における、北斗の拳コア・ストーリーを握る男。
 腐った豚に等しい政府高官や大企業家、そしてその彼らが起こした過ちを繰り返させない為、カーネル達は高潔な思想と揺るぎ無い信念、そして国家に対する忠誠を持っていた。
 彼を最強と言わずして、誰が最強だと言うのだろう。

 それだけではない。カーネルには少なくとも二度、ケンシロウを仕留めるチャンスがあった。出会い頭と、リンを庇ったケンシロウを槍で刺す瞬間である。だが、彼はケンシロウを殺していない。単純に殺せなかったのか? いや、違うだろう。カーネルは死ぬ間際、ケンシロウに「神の国の建設さえも・・・」と呼び掛けている。強者は強者を知るのだ。
 カーネルは個人がどれほど強かろうと、軍勢には勝てない事を知っている。つまり、カーネルは、ケンシロウを己のパートナーにしたがっていたのだ。そのために、殺せたはずのケンシロウを殺さなかったと言える。
 勿論、カーネルの実力がそこまで強力だと盲信している訳ではない。
 カーネルは、ケンシロウと無理に戦おうとしていなかった節があり、ファルコがラオウと刺し違えるのと同じぐらいに、カーネルとケンシロウの力が均衡していたのではないだろうか。
 ケンシロウ相手に、殺さずして勝つ事は出来ない。あっさり殺してしまうか、まともにやりあえば刺し違えるか・・・。だが、カーネルはケンシロウをパートナーにして世界最強の国家を築こうとしたがために、その高貴な思想に耳を貸さなかったケンシロウによって葬られてしまう。
 彼の双肩に掛かった任務を重んずるが為、カーネルは、
 「おれには、もう、なにも目的はない。すべてを失った人間だ」
 と思想のなさを暴露したケンシロウに敗れたのだ。

 ここまで証拠が揃えば、間違いないだろう。カーネルは世界最強レベルだったと断言できる。彼の実力はラオウを凌いでいたかも知れない。語り尽くされていないだけで、彼は北斗の拳における最重要人物だったのだ。
 彼の言葉は正しく、カーネル、その思想、南斗無音拳、GOLAN。その全てが最強だったと知った我々は、涙を禁じえない。

 まぁ、その最強の国家を築く為にやった政治活動が、女漁りだった事はあまりにも芳しくないのだが・・・。その事実にも我々は涙を禁じえない。 
 また素朴な疑問として、神の国にあるカーネルの部屋まで、どうやってリンとバットがたどりつけたのか? というものがある。
 バットは第2部で戦うも、やっぱり弱かった訳だが、ひょっとすると、リンがむちゃくちゃ強かったという可能性が出てきた。光も差さない地下でモグラのように生き続けた天帝ルイの妹だけの事はあり、実はリンが最強と言う説も捨て難い。ただし、これはケンシロウが倒した死体をたどってきた為に、危険とは遭遇せずにカーネルの塔に行けた可能性の方が高いので、やっぱりカーネルが最強。 これ間違いない。
 まぁ、唯一気になっている事があるとすれば、ケンシロウがカーネルを誉めた、とされている言葉である。
 「かつて知らぬ間にこれほど近くまで獲物に接近を許したことは無い」
 よくよく考えると、カーネルってば獲物呼ばわりされてます。
 ・・・えもの。
 強敵(とも)とは大違いですね。

 やっぱり、ラオウが最強だと言う事でしょうか・・・





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