渡辺ヤスヒロ
経済特別区制度(以下、特区)というのは某首相の言い出した経済政策の一つなのだが、どうもあちこちで勘違いしている人達がいるようでなかなか実施されていないようだ。そもそもカジノ特区とかにすれば現行の法律を変えられると考えている時点で既におかしい気がする。と言う話は置いておき、マンガ家特区と言うものを考えてみた。
マンガ家という職業は結構前から存在している。そしてマンガ家というのは異常に儲かる職業であることも分かっている。高額納税者からマンガ家がいなくなったことがないことを見てもそれは分かる。確かにそんな高収入になるマンガ家はマンガ家の中でもほんの一握りである。しかし、彼らの収入は尋常ではなく多い。そしてその収入を得るのは恐ろしいことにマンガ家一人(一組)だけなのである。いきなりアニメ化したりして売れてしまったマンガ家は特に大した税金対策も出来ずに高額な税金を払うことになる。
高額納税ということはつまり、そのマンガ家が住む市区町村への税収も尋常ではないということである。その税収額は大きな工場を誘致したのと同じ位ではないだろうか。
そこでマンガ家特区とするのである。具体的にはマンガ家への税制優遇がまず上げられる。それによって高額納税者であるマンガ家の側へのメリットとするのである。少々税率を変えたところで他に引っ越されたりすることを考えれば市町村側にはほとんどデメリットはないと言えるだろう。
しかしそれだけでマンガ家を誘致することができるだろうか。やはり無理ではないかと思われる。確かに節税は出来ても田舎へ行ったお陰で交通の便が悪くなり、編集者との連絡が困難になったり締め切りが1日早まったりしてしまうならばどんなマンガ家も行きたがらないだろう。つまり、マンガを描くという環境を良くし、少なくとも都会にいるのと同様の便利さがなくてはいけないのである。しかし、地方自治体が本気を出せばそんなことは難しくもなんともない。今までの何だか良く分からない使い道の地方交付金等を考えれば、インフラの充実など誰も反対はしないし簡単なことである。(註1:愛知県某所では某売れっ子マンガ家が原稿を空港へ届けるための道路を作ったそうである。)
つまり、街自体をマンガ家に便利な場所にするのである。地域ぐるみでの保護を行うのだ。そしてもちろんそれで売れっ子マンガ家が来てくれれば問題ないが、そうなる可能性のあるすべての新人も育成していけば良いのだ。売れても引っ越さないとか厳しい契約をしなくても居心地が良ければ人は集まるものである。マンガ家を優遇すると言っても問題が一つある。何をもってマンガ家と認めるかどうかだ。何年もマンガを描いていない自称マンガ家をマンガ家とその町は認めることはできないだろう。もしかしたら地域住民すべてがそこらの編集者より厳しい存在になっているかも知れない。
マンガを町起こしのネタにしているところはいくつか存在するが、その多くは有名なマンガ家の出身地だからとかマンガの舞台だからとかである。マンガ家と言う職業自体を保護したりしようとしている場所はない。今がチャンスである。
ただでさえ出版社や情報の集中する東京がマンガ家憧れの地になってしまっている現在、それを越えるメリットがなくては意味が無い。しかし、1000人に一人でも当たってくれれば元が取れると考えれば危険の少ない賭けなのではないだろうか。
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