幾千億の星力を求めて

杉山晃一



●はじめに
今回紹介するラブリンバトン(タカラ製)とは,アニメ版「コメットさん☆」(2001.04.01〜2002.01.27放送)の関連製品である.番組が終了してから1年以上経過しているので,現在は入手困難な状況である.
本製品の目玉は,「TVにつなぐと星力や恋力に反応する!!」という機能である.

具体的には,「ステーション」と呼ばれる装置をバトンとペアにして利用する方式になっている.
(1)ステーション・・・TVのスピーカー前に設置.ある特定の音を検知すると,バトンに信号(赤外線)が送られる.
(2)バトン・・・・・・ステーションからの信号を受信し,振動,発光,音を鳴らす.

ここで重要なのは,ステーションおよびバトンは「星力」や「恋力」に反応するのであって,取説のどこを見ても,「音の認識を行なっている」とは書かれていない点である.実際,「コメットさん☆」以外の番組を見ていても,バトンは反応するわけであるが,これは,決して音を誤認識したのではないのである.
このことに着目して,身近にある,様々な事象に「星力」,「恋力」がどのくらい含まれているのかを調査してみることにした.


●評価システム
今回の調査で用いた評価システムを図1に示す.様々な音を,より精度良く拾うため,TVのスピーカではなく,オーディオアンプを経由することにした.これにより,TV,ビデオ,DVD,CD,PCなどからの音が調査可能となる.


図1 評価システム
ステーションには映像と音声の出力端子があり,これをTVの入力端子につなぐ必要がある.ステーションに内臓のマイクを通じて音を拾う際,十分な音量を確保するためである.

ステーション側のスイッチを「ゲーム」に切替えると,スタート画面が表示される.ここで,「オプション」を選択すると,音量調整画面が表示される.
スピーカから十分な音量が得られれば「OK」と表示される.スタート画面におけるメニューの選択,決定は,バトン側の押しボタンスイッチおよび,バトンに内臓された振動スイッチを用いて行なう.さながら,魔法を使っている感覚に陥る.この作業を行なっている光景は,はたから見ると,いい歳したおっさんが血迷ったと思われること必至なので,戸締りには十分な注意が必要である.
音量調整が完了したら,ステーション側のスイッチを「TV」に切替える.
これで,あとはTVを見るなり,ビデオを見るなり,CDを聴くなりすれば良い.
一度,音量の調整をすれば,ステーションからの映像,音声出力は事実上不要になるので外しておいても良い.評価中の様子を図2に示す.画面に何やら映っているが特に意味はない.

図2 評価中の様子
●直に音を入力してみる
図1に示した評価システムで,せこせことTV,ビデオ,DVD,CD,PCなどの音を拾っているうちに気がついたことがある.
...別にアンプ通す必要ないじゃん!!
つまるところ,そのままステーションに向かって音を発すればよいのである.
せっかくなので,こんな調査も併せて行なってみることにした.


図3 比較調査の様子1     図4 比較調査の様子2

●ラブリンバトンの反応音
まず手始めに,「コメットさん☆」のBGM集I,II,手近な音源を用いて,
ステーションおよびバトンがどのような音に反応をするか調査してみた.
この結果,下表のようにA1,A2,B1,B2,B3,B4の合計6パターンの反応が得られることが分かった.(BGMに収録されているものについては,表中に記しておく.)
音 概要(BGM収録No.) 力の源
A1 ”ピロン” 星力
A2 ”ピッピッピッ” 星力
B1 「ヘンシン!」(BGMTNo.3) 星力
B2 「マジカルコメット!」(BGMTNo.8) 星力
B3 「魔法のドア」(BGMUNo.3) 恋力
B4 「REBORN」(BGMUNo.14) 恋力
上記6パターンがどのような場合に出現するかを,評価システムを利用,あるいは直に音を入力することで調査してみた.

●評価尺度の定義
TV,CM,ビデオ,DVD,ゲームなどの音源を使用して調査した結果,
A1,A2,B1,B2,B3,B4それぞれのカウント数合計は下表のようになった.
あらかじめ予想していた通り,A1が最も多い結果となった.
A1を基準として,それ以外の倍率(出現頻度)を示しておく.

― A1 A2 B1 B2 B3 B4 合計
カウント数合計 556 138 80 31 8 17 830
倍率(A1を基準)) 1 4 7 18 70 33 ―
各評価サンプルにおけるA1,A2,B1,B2,B3,B4のカウント数を,それぞれCa1,Ca2,Cb1,Cb2,Cb3,Cb4とする.Ca1〜Cb4に対し,上表における倍率を掛け合わせたものを「星力絶対値」:S0と呼ぶことにする.
 S0=(Ca1*1)+(Ca2*4)+(Cb1*7)+(Cb2*18)+(Cb3*70)+(Cb4*33)

集計の結果,全ての評価サンプルにおけるS0の合計:Σ{S0}は,
 Σ{S0}=3347
であった.そこで,S0の値をΣ{S0}で除算することで正規化を行なうことにした.S0をΣ{S0}で正規化したものを,「星力評価値」:SSと呼ぶことにする.

 SS=S0/ΣS0(=3347)*100
 ここで,0≦SS≦100,Σ{SS}=100 である.(単位は%)
「恋力」は「星力」に変換可能である(と「コメットさん☆」の番組内で説明されていた).そこで,以下の総合評価では,これらの力を別々にではなく統一的に扱うことにした.星力評価値:SSを用いて,各評価サンプルにおける「星力」がどの程度あるかを調べてみた.
今回用いた各種音源と評価尺度の関係を以下に示す.調査期間は,2003年5月24日〜30日である.

● 総合評価

● まとめ
総合評価の結果,
ヤクルトVS阪神戦(2003年5月25日(日))が極めて強い「星力」を発していたことが分かった.

意外なところでは,「絶対運命黙示録」(少女革命ウテナ),「踊るマハラジャ」のテーマ曲といった,一見,何の関係もなさそうな曲の中に,実は強い「星力」が秘められていることが判明した.

魔女っ子ものの曲については,比較的新しい作品が上位を占めているものの,2,30年ほど前の作品群については,星力がほとんどないことが分かった.つまりこれは,「星力」自体が,往年の作品群における「魔法」とは異質の存在であるということを如実に物語っている結果と言えよう.
また,アーケードゲームの中では,ギャプラスが圧倒的な首位を誇っている.
私自身,心底惚れ込んだゲームだけに,大変喜ばしい限りである.当時高校生だった私が,なけなしのこずかいをつぎ込むほどのめり込んだのは,あながち間違ってはいなかったということであろう.
調子に乗って,弾語りの曲も評価してみたところ,私自身,最高で0.24%の「星力」を発していたことが分かった.
今回の調査結果から,世の中は「星力」に満ち溢れているということを明確にすることができた.また,私自身から,微少ながらも「星力」を検出することができ,大変嬉しい限りである.(瞳に星の輝きは持っていないが.)
今後,もっと強い「星力」が使えるよう,更なる精進をしていこうと考えている.


(編者:編集上の都合で調査結果一覧表を掲載出来ませんでした。読者の皆さん及び著者である杉山氏にお詫びします。掲載出来なかった分は杉山氏のWebサイトを参照下さい。→http://www.e-net.or.jp/user/visage/home.htm)





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