コンピューターは脳を模倣しろ

穂滝薫理



 人間の脳には“しわ”がよっている。これは脳の表面積を増やすためなのだそうだ。下等な動物、たとえばネズミなどの脳には、しわがない。なぜ表面積が大きいといいのだろう。知能は脳の表面で作られるのだというもっともらしい説もあるが、一方には脳の熱を逃がすためだという説もある。この2つが関連しあうものかどうかはわからないが、知能はともかく、熱を逃がすというのは納得がいく。誰でも経験があると思うが、考えすぎると熱が出て(知恵熱)、そして熱が出ると頭がぼうっとして考えられなくなる。だから出た熱は効率よく逃がさねばならない。熱は表面から逃げるため、表面積が大きいほうが熱が逃げやすいというワケだ。これはお湯を考えてもらえばわかりやすい。湯のみ茶碗に入れた熱湯はなかなか冷めないが、皿にあけた熱湯はすぐに冷める。皿にあけたほうが、お湯の表面積が大きいからだ。そして、表面積を増やすために進化が選んだ結論が、しわだった。ときどき、脳が“自然界のヒートシンク(放熱器)”と呼ばれるのも当然といえるだろう。
 よろしい、わかった。
 生物界で最高の知能を持つ人間の脳のしわだ、放熱効果も最高に違いない。
 それでは、そんなに放熱効果が高いのならば、今もオーバークロッカーたちを悩ませているCPUの熱を逃がすためのヒートシンクを、脳のようなしわしわの形にすればいいのではないか。これなら、3.2GHzのペンティアム4を4GHzくらいでドライブさせても、たぶん熱的には大丈夫。
 こうして、コンピューターは、また一歩人間の脳に近づくのである。





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