相性に見る血液型生き残りシミュレーション
渡辺ヤスヒロ
「なぜ血液型がＯ型の人はいなくならないのか。」
その疑問からこの問題は始まった。
どういうことかというと、難しい問題ではない。Ｏ型の人とＯ型以外の人の子供にはＯ型が生まれないならば、Ｏ型の人はどんどん減っていき、そのうちいなくなってしまうはずなのにどうしていなくならないんだろうか。そういう疑問を持った人がいた。確かにＯ型の人とＡＢ型の人の子供はＡ型かＢ型でＯ型は生まれない。しかし、知っている人はすぐに分かるが血液型には表面に出ている型の他に遺伝子型があり、Ｏ型遺伝子は表面的にＯ型とならなくても消えてなくなるわけではないし、Ａ型やＢ型の人とＯ型の子供がＯ型になることも珍しいことではない。そのためＯ型がどんどん減っていくようなことはない。
｜ ｜ ｜
Ａ Ｂ ＡorＢ
遺伝子型で見ればＡ型はＡＡとＡＯの２種類ある。
ＡＡ＝Ｏ ＡＯ＝Ｏ ＡＯ＝ＢＯ
｜ ｜ ｜
ＡＯ ＡＯorＯ ＡＢorＡＯorＢＯorＯ
図１．両親と子供の血液型の関係
ちなみに生まれる子供の血液型の可能性は平等であると思われている。
なーんだ。つまらない勘違いか。とそこで結論を出して話を終わってしまっては机上理論の名が廃る。果たして本当にＯ型は消えないのだろうか？血液型の人数配分は変わっていかないのだろうか。
ところで血液型と言えばまず普通思い浮かべるのが血液型での相性だったりすると思う。血液型で性格や男女の相性を考えるのは世界中でも珍しい風習だそうである。女の子の占いの一種だったりコンパでの自己紹介後の話題作りのネタの一つとなる程度のことで、実際のところ筆者を含めまともに扱っていなかったりしていたが良く考えると相性というのは大きな問題と言えるのではないだろうか。男女の相性はそのまま結婚するかどうかにつながり、やがて生まれてくる子供にも直結する。もちろん相性が悪いカップルもあるだろうが、良い相性であればくっつき易くなるだろうことは容易に想像できる。
ならば、血液型同士の相性の良し悪しを探ればそのうち廃れていく血液型がはっきりするのではないだろうか。相性による子供の生まれる確率をシミュレートしてみることが出来る。この血で血を洗う血液型同士の生き残りを懸けた戦いの結果、果たしてＯ型は本当に消えてなくならないのだろうか。
まず、血液型別の相性を一覧表にしてみた（表１）。
これは、横軸の血液型の女性と縦軸の男性との相性を確率で表したものである。その血液型の女性の何％がどれかの血液型の男性とカップルになるかが数値化してあり、縦に合計すると１００％になる。例えばＡ型の女性はＯ型の男性と相性が良いので全体の４０％がカップルになると言う具合だ。
この数値はそのものずばりの数値が無かったため、インターネット上で適当に検索した相性からそれっぽい値を作成した。今回は相性のデータが生存割合に影響があるかどうかを検証するためそれほど正確である必要はない。
次にここから血液型を遺伝子型にした一覧表を作成する（表２）。ここまでは特に複雑な計算も不要である。なお、この遺伝子型に分ける場合にＡＯ型とＡＡ型、ＢＯ型とＢＢ型は全く平等に取り扱っている。
当初の想定通り、表２の各数値がそのまま生まれてくる子供の数の確率を示していると考える。
各マス目で生まれてくる子供の血液型の可能性をさらに細分化する必要がある。子供を生む人は初め遺伝子型を２つ持ってきている（ＡＯ、ＢＢなど）ので、生まれてくる子供は２×２の４通りの血液型となる。この確率も平等に１／４とする。
例を上げれば、ＡＯ型の女性がＡＢ型の男性と子供を作る確率は表にあるように１０％。そして生まれる子供は、ＡＡ，ＡＢ，ＡＯ，ＢＯの４通りなので各２５％づつとなる。ＡＯ型女性が５０人の場合には、この組み合わせで生まれる人数は、
ＡＡ型、ＡＢ型、ＡＯ型、ＢＯ型それぞれが ５０人×１０％×２５％＝１．２５人
となる。
そういった計算をすべての組み合わせで行い、最終的に血液型別に集計した人数が次世代となる。
計算上は血液型を遺伝子型で行ったが、結果は分かり易いようにＡ，Ｂ，Ｏ，ＡＢの４種類でグラフ化してみた。
初めすべての血液型の人数を１００人（Ａ型はＡＯ型を５０人ＡＡ型を５０人とした。Ｂ型も同様）として５０世代までの結果が図２である。
図２．各血液型の人口分布図
すぐに状態が固定化し、後には変化はない。つまり相性によって血液型の人数は減っていったりしないということだったのだ。この計算によれば、状態が安定化するまでにはほんの数世代で十分であり、初期データにはほとんど依存しないことが分かっている。極端なことを言えば、初期状態で女性がＯ型１００人しかいなくても１０世代程度で全く同じ血液型人口分布に落ち着いてしまうのだ。すべての血液型はまさに血を分けた兄弟のように結束が固いと言えるのであった。
図３．Ｏ型１００人のみから始まる人口分布
もちろん、この血液型の人口配分は相性データにより変化する。最終的に安定する人口配分がどうなるかは相性次第なのである。すべての血液型で極端にＯ型との相性が悪いとしたデータを作成してみれば当然、Ｏ型の人数配分は減少するが、それでもなくなることはない。Ｏ型の人は安心して良いのだ。
しかしここでもう一度良く考えてみると、血液型別人口配分は相性によって決まっているということが今回判明している。現実での血液型人口配分は刻一刻と変化しているわけではない。もう随分前から決まっていて変わったりはしていない。これも今回の結論を裏付けている。すると導かれることは、血液型別の人口配分から元の血液型同士の相性もある程度逆算できると言うことであり、血液型での相性は現実に確実に影響を与えているということだったのだ。
血は水よりも濃し。血液型占い、侮り難しである。
あとがき
2003年の日本SF大会T-con3に発表した内容を論文化したものです。
こうしたシミュレーションが簡単に出来ました。エクセルは便利ですね。それにしても論理展開が思ったように進まなかったとしても結果として楽しめる結論になれたと思います。