夏休み児童増加論

穂滝薫理



 この時期、街で子供たちの姿を見かけることが多くなる。いったい今までどこにこんなに大量の子供がいたのか、と思うくらいの子供がいるのである。まるで、夏のある日、突然大量に発生するセミのように。私の知り合いの知り合いも「このくそ暑いのに、暑くるしいくそガキどもがうろちょろしやがって。」と申しておりました。やつらはいったいどこからやってくるのか?
 一方、電車通勤しているサラリーマンの方は同意していただけると思うが、この時期、急に車内がすきだす。昨日までギュウギュウ詰めの満員電車だったのが、ある日を境にふっとラクになるのだ。ある日とは、夏休みの始まりの日であり、急に車内がすきだすのは、学生がいなくなるからだ。やつらはどこへいったのか?
 この2つの現象を結びつける合理的な結論は1つしかない。夏の間は、学生が子供になっているのだ。“童心に返る”などという言い方があるが、夏休み中は、学生たちが“身も心も子供に返って”いるということなのだろう。
 大人たちはどうか。残念ながら大人たちの夏休みは短い。ふだんの仕事でお疲れの大人たちは休みの日でも、心から子供になりきれない。あるいは、休み明けの仕事にことが気になってそれどころではない。また、悲しいかな、歳をとるとともに、頭も体も硬くなっていき、子供に戻るには硬すぎるのだろう。どうせ上司に「もっと若くて柔軟な発想が必要だよ、キミ。」てなことを言われているのだ。
 さて、夏休みが終わったあと、やつらはどうなるのか。もちろん、“ひと夏の経験”をして子供から大人になっていくのである。





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