解説・ペド宇宙論天文学概論

藤野竜樹




 ここ数年、学会論文集の中で常に最も長い論文を書き続け、しかもオタクでロリコンという最悪な趣味の者以外には全く判らない文をだらだら続けるので、周囲から白眼視されている加藤だったのだが、どういう風の吹き回しか6月半ば、私藤野に「解説を書いてくれない。」と言ってきた。こっちだって論文の締め切りが迫ってて忙しいから、「僕はあんたのネタが判るほど人生終わってない。」と断ったのだが、パワーパフガールズをダビングしてやるから、との提案にまんまと食指を動かされて、気が付いたらこんなことになってしまった。とそれはいいのだが、これから下記にお見せするような解説をとりあえず書いてしまった後に困ったことが起きた。氏の今回掲載予定作品である“ペド宇宙論天文学概論”が学会編集部から没を食らってしまったのである。理由は単純、“長すぎる”というものだ。
 気の毒だとは思うが、大体やりすぎである。元々ペドシリーズはその不評のくせに頑固なまでに長かったのだが、上記論文などはとうとう16ページを超えてしまい、ことそこに到ってとうとう編集から、「50ページの論文集にそんな長いの載せられるか!」と三行半を突きつけられてしまったのだ。まぁ、無理もない。という訳で、今回加藤はこれに全力投球してたから、本論文集に加藤論文は載らないことになった。平和で結構。
 じゃぁなんでお前が書いてるのだというところが不思議なのだが、おかしなことにこの解説文は掲載されることになったんだな。理由は、“テキトーな長さだから”だそうで、いいのか? って思うのだが、とにかくまぁ、そういう経緯である。


 ペド宇宙論天文学概論は、加藤が机上理論学会用に寄稿したペドシリーズとしては、“物理学”,“色彩心理学”,“文化人類学”,“カオス学”に続く第5段で、その名の通り宇宙論と天文学を肴にロリコン論を書き上げた作品である。天動説から始まって天文学の成り立ちを概観し、最新宇宙論までを扱っている。毎回専門書と首っ引きでつまらない親父ギャグを書いているが、本論もそうである事は論を待たない。本人は「ペドシリーズは僕のライフワークです。」なんて言っているが、もう人生終わっているやつが何を言ってるんだか。シリーズにする気持ち無く思いつきで書いた物理学はともかく、人のあまり見返らない分野のパロディをしたいという気持ちで続けていたようだが、哲学で詰まって有名分野に落ち着いたというのが単純な真相だ。
 導入部で相変わらず最新アニメロリータのことを書き出している。TVアニメ、機動戦艦ナデシコに出てくる女の子・ホシノルリのファン(本人は否定している)からやっと卒業したと思ったら、また対象年齢が下がってやれやれである。(パワーパフガールズなんて幼稚園児だよ。)ケミカルXとかエトワールとか、文中で病的に叫んでいるが、前者はパワーパフガールズに出てくる薬品の名前、後者はコメットさんの魔法の呪文だ。美少女の傾向分析なんていってるが、単に本人が気に入っているだけだろう。
 やっと天文学に入って最初は天動説ネタである。昔のアニメは子供達中心に回っていたと思ったが、実はスポンサー中心に回っていたというもの。黄道12宮や火星軌道の逆転、周転円などをパロっている。周転円は惑星の“惑う”動きを天動説のまま説明しようと試みた、数学の補助線みたいなもので、コペルニクス以前の中世では最新の科学だった。天動説が信じられていた頃は、天動説を基調として整合性をもった学問が発展しているところが(パラダイムシフトとか硬いこと言う以前に)笑っちゃうのだが、その辺の史観はちゃんとパロディしているようだ。古典天文学はその他、ロリータアニメとしては古典に入る魔法少女・ミンキーモモをネタにしてガリレオの宗教裁判や転びキリシタン、ケプラーの三法則などが肴にされている。
 続いて現代天文学だが、ここでは歴史通りスライファーの赤方偏倚発見とかハッブル定数からはじめ、膨張宇宙解を計算したフリードマンからビッグバン理論のガモフに続けている。ビッグバン理論は宇宙が元々一点から始まったとする説で、加藤はここに日本のロリコンが手塚治虫から始まったと説く。この説の当否は本人も迷っているようで、文中の研究者に、「あの人の絵は萌えない!!」って頭を抱えさせている。唐突に出てくるプライムローズって名詞は手塚が描いた(模擬)ロリコン美少女漫画のことなんだけど、確かにチャンピオン連載当時は吾妻ひでをに水をあけられっぱなしだった。が、それでも加藤は手塚創始説を推すようなのだが、根拠としてディズニ○のライオ○キ○グをあげている。理由は、「初期の世界に均等に散らばった手塚がユング的深層心理に刷り込まれた」からだそうで、だからあの作品はジャングル大抵と似たとのこと。(イドまで持ち出して大袈裟なこと書いてるが、この項で加藤の筆に一番力が入ってたのはセーラーマーキュリーのパンツの話題だと思う。ちなみに、“大抵”は意図的。)
 さて、ここから現代宇宙論の最先端を元にしたパロディになる。スティーブン・ホーキングの虚時間や、反粒子問題、アラングースのインフレーション説(日本の佐藤センセももっと有名になっていいのに...)なんかが肴。反粒子が現在残ってないのは何故?ってのが反粒子問題なんだけど、「もし手塚が初期宇宙の構成に影響していたのなら、彼の描く中性キャラは間違いなく女性っぽくなっていたから、初期宇宙は美少女に傾くのは当然である。」とあっさり解決している。ちなみに、光速より早く膨張するインフレーション宇宙は、「コミケで出されるあらゆる美少女は個人では捉え難く膨張する」と、買おうと思っても買い切れない実情に置き換えられている。
 その後は目を星の一生に転じ、恒星が核反応によってヘリウム以上の元素を構成していくさまを、個人のオタク度が進行していくさまと捉える。おねぇさんからメガネっ子、メイドさんと、だんだん症状が重くなり、普通じゃ萌えなくなるからどんどん重い病状に悪化して最後に当然ブラックホールに行き着くという...。オタクの将来は暗いね。
 で、やっと最後、とうとうと述べてきた加藤説宇宙の未来の話題になる。現代は観測衛星COBEとかの資料から膨張宇宙が定説になりつつあるが、ビッグクランチに収束する輪廻宇宙もいまだに根強い。この両者を扱って、ダークなオタクだけが存在する膨張の宇宙の将来と、女の子がコミケで再び幅を利かせたことで片隅に追いやられたオタクたちが肌も触れ合わんほどに密集する収縮宇宙の将来を予測している。これはどっちも嫌だな。
 オチは映画・メトロポリスのラストから。ヒロインロボット・ティマの最期と都市崩壊が描かれるシーンで流れる曲、レイ・チャールズの“I can't stop loving you”だ。全体としてはパッとしない映画なのだが、このシーンが素晴らしいのは確か。(ただ、加藤は上記歌の歌詞については不満らしい。前向きでない人間は嫌いなんだそうだ。)オチそのものは面白いのか、藤野にはなんとも言い難い。


 ざっと氏の論文を概観したが、正直言って万人向けとは言い難い。相変わらずオタク用語満載だし加えて専門用語が輪をかけて煙にまいている。NHK天才てれびくんでやってたアニメのネタなんて振られても誰も分かんないって。でもまぁ、天文学と宇宙論の本に書いてある大要的なところを全てパロディしてるし、先回のペドカオス論がゲーム論に終始してたことに比べれば、真っ向勝負だったとは言える。加藤本人が言ってる“新しい啓蒙の形”ってのも、形になってきてるように見える。
 まぁ、ついて来る人がいるかどうかだわね。


 本来、上記までで解説文は終わっている。ここであることにして語っている論文“ペド宇宙論天文学概論”ってのは別に架空ではないので、これ読んで読む気になった奇特なひとがいたとしたら、下記HPに行って下さい。まぁ、冬には本の形にしたいと言ってるようですがね。

http://www.wa.commufa.jp/~norp/kijo/list_kato/rori_cosmos.html
                         (文責・藤野竜樹)







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