人類が砂漠に住むための方法と手順

穂滝薫理



 このまま世界の人口が増え続けたとすると、人類はやがて砂漠にも住まなくてはならなくなるだろう。過酷な戦いになるかもしれない。しかし、砂漠はまったく不毛の地ではない。数は少ないが、植物も生えているし、すでにそこに住んでいる動物や、人間もいるのである。今後我々が砂漠に進出するにあたって、彼らの生活や知恵は、最も早くそして効率よく住環境を整えるための参考になるハズだ。
 本論では、彼らの生き方を観察し、応用するための方法を考察してみたい。

 砂漠に住んでいると聞いて、誰でも真っ先に思いつくのがラクダだ。ラクダの特徴は背中にこぶがあることで、こぶの中には脂肪が蓄えられている。食べ物に乏しい砂漠では、何日も食べられないことがある。そんなときラクダたちは、背中の脂肪を少しずつ使って、生き長らえているとのことだ。というワケで、まずは背中にこぶがある人を砂漠に送り込もう。有名な『ノートルダム寺院の鐘』に出てきたような人たちだ。彼らは、少しばかり食べなくても生きていけるのだから、砂漠で暮らすのには我々より断然有利なハズだ。まず、彼らを送り込んで、我々普通の人々が暮らせるように、以下に挙げるようなことを下準備としてやってもらうのだ。

 砂漠と言えば暑いのが常識。砂漠に住むトカゲなどの小動物は、岩陰や、砂丘の日の当たらない側など、ちょっとでも陰になっている場所を見つけて暮らしているらしい。ところで、それとは逆に都会では日照権が問題になっている。ビルを建てることで日が当たらなくなっちゃったじゃないか、とお隣さんが怒っているのだ。砂漠では生きるための貴重な財産である日陰が、なんと都会では邪魔者扱い。これはもったいない。というワケで、砂漠にビルを建てればこの問題は一挙に解決する。もちろん、砂漠では日の当たる側で暮らすことはできないから、人々はビルの陰に暮らすことになる。ビルの中なんてもってのほか、温室効果により気温は100度以上になっていてもおかしくはない。

 さて、いよいよ実際の暮らし方を考察してみよう。先ほどトカゲの話が出たが、砂漠に住むトカゲが足を交互に上げ下げしているのをテレビで見たことがある人も多いだろう。これは、ずっと両足を地面についたままにしていると熱いからだ。現実問題としてはヤケドをする。そんなワケで、砂漠では誰もが片足を上げながら過ごすことになるだろう。お相撲さん経験者は有利かもしれない。余談になるが、第2陣は相撲取りに行ってもらうことにしよう。脂肪も蓄えていることだし。

 砂漠では雨がほとんど降らないため水がない。砂漠に暮らす生き物たちはどうしているのだろう。ある昆虫の暮らしにヒントが隠されていた。その昆虫(名前は知らないけどコガネムシみたいな甲虫)は、朝方になると数少ない砂漠の植物の葉にぶらさがる。すると、植物の呼吸によって吐き出された水蒸気が、朝方の冷気によって冷やされ水滴となって葉につく。葉にぶらさがっていると、それが昆虫の方に集まってくるのだ。で、それを飲むという寸法だ。人間が植物の葉にぶらさがるワケにはいかないが、ともかく必要なのは植物だということがわかる。というワケで、砂漠に畑を作ればよい。どんな植物が水滴を集めやすいかは今後の研究を待たなくてはならないが、とりあえず、キャベツとか、トウモロコシとか、手に入りやすくて葉っぱが多いものから始めてみるのがよいだろう。ここで注意しなくてはならないのは、その植物を決して食べてはならないということだ。食べてしまったら水滴が集められなくなるではないか。

 実は砂漠の、それもど真ん中にある都市がアメリカにある。その都市こそ我々が最も参考にすべきものだ。その都市とはラスベガスである。私も行ったことがあるが、ラスベガスはほんとに砂漠のど真ん中にあって、周りには砂以外なにもない。そして乾燥しているので、クチビルがすぐ乾く。ラスベガスへ行く予定のある人はリップクリームを忘れないように。以上、ラスベガスちょっといい話でした。さてラスベガスと言えば、ご存知、カジノである。ベガスはカジノだけでもっているような都市なのだ。だから、カジノさえ作ってしまえばもう安心。サハラ砂漠だろうが、ゴビ砂漠だろうが、人は暮らしていけるのだ。雨が降らなくても、砂嵐が起こっても大安心。だって、カジノがあるんだもん。でなきゃ、ラスベガスがやっていけるハズがない。

 最後に、人々の精神的なよりどころはどうするべきか。砂漠の先住民として忘れてならないのがアラブ人たちだ。もうおわかりとは思うが、砂漠に住む民たらんとする我々はイスラム教に改宗しなくてはならない。そうすれば、背中にこぶがなくてもアラーの神が護ってくれる。



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