都市部における自給自足問題

野人



 都市化の波に押されて、人は自然の中に安らぎを求めていくようになった。都市を捨てて、田舎での自給自足をめざす人の例はテレビでもよく紹介されている。しかし多くの人は、自然の生活にあこがれながらも都市を離れることができず、都市に居ながら自然を求めている。ガーデニング、有機肥料、家庭での野菜の栽培等が良い例である。しかし、既に都市化してしまった所や、住宅密集地、アパート等では自然の雰囲気を出すにもかなりの限界が生じる。自給自足となるとさらに困難だ。人間とは贅沢な生き物で、これらの障害があってもそれ以上の事を望むのが普通である。

 一件不可能に見えるこの行為(都市における自給自足)も、方法によっては可能にもなりうる。アパートの屋上や近所の公園、共同農地、庭の軒先等を使えば1人や2人分ぐらいの野菜の栽培は可能だろう。一見雑草に見える草が食用だったりする事も多い。たんぽぽやつくし等が良い例だ。最近の稲は狭い耕地面積で取れる米の量が増えるように研究されているようだし、そう考えていけば、植物繊維やその外の栄養素もある程度は摂取できるであろう。これで野菜類の心配はない。
 菜食主義の人間ならこれで問題はないが、普通の人は動物性蛋白を摂取したいと思うものだ。都市部や住宅密集地での野生動物は極めて稀で、山林が近くにない場合ならなおさら捕獲は無理である。犬猫は少なくはないが、他人に飼われているペットを捕獲し食べてしまうのは法律的に窃盗になる。川があれば魚を釣る手もあるが、都市部の汚れた河川に棲む有毒物質に汚染されきった突然変異のような魚が(いたとして)食べられるわけではない。昆虫類という可能性も否定できないが、都市部での採取は時期にもより、安定性が低い。
 そこで注目したのが都市部でも定住しているスズメやハト、カラス等の鳥類である。さらに、近年は野性化していったインコ等元々ペットとして飼われていた鳥達の繁殖も確認され話題となっている。彼らを狩猟できれば、住宅地の鳥類によるフン害や植木等への被害問題も解決するであろう。幸い、都市部に生息しているカラスやスズメ、ハトと言った鳥類は狩猟禁止になっておらず、その気があれば誰にでも狩猟は可能である。

 鳥類を狩るにあたっては3つの問題点がある。
 まず、彼らは飛んでいる事。一見単純だが、人間は自力で空を飛べない。そのため狩る場合、落とすもしくは地面を歩かせる、余り高くないところに降ろさせる。といった工夫が必要となる。
 第二に、都市部や住宅密集地固有の問題だが、落とす場所や、罠の位置、器物を損壊させるような行為は避けなければならない。これを怠ると余計な問題が発生してくる。
 最後に、彼らは意外と頭がよい事。これは主にカラスに対する問題だが、罠で捉える場合に問題となる。カラスは下手な罠にはかからないのだ。なおかつ、同じ罠を多用することも不可能になる。カラスが2回以上同じ罠にかかる確率は極めて低い。多少の工夫では役に立たないので真剣に取り組むことが重要である。
 以上の事柄を視野に入れ捕獲作戦を実行すれば、都会や住宅密集地での自給自足も不可能ではなくなるであろう。

 余談ではあるが、都市部等の汚染された地域に定住している鳥類を捕食する場合には、彼らの内臓を取り出す必要がある。臓器の中に有害物質が入っている可能性もあり、臓器を食そうとした場合はそれなりの覚悟が必要である。
 スズメは飲み屋で出すところもあるから、味を知っている人もいるだろう。ハトを食す人の噂話はたまに聞くが、それで死んだ人がいると言う話も無いから大丈夫だろう。しかし残念なことに、カラスの場合は食した人間の話をまったく聞いたことが無い。このため、味の保証は一切できない。もしかしたら人に言えない程凄い味なんだろうか。



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