新たなビジネス特許許可局

渡辺ヤスヒロ



『あなたの行っている商法は○○の特許を侵害しています。当商法利用の即時停止と過去〜年に渡る損害補償を請求します。』
ある日突然、こんなEメールが届いたりする。自分で工夫した手段が既に特許を取っていたと言うわけだ。こんな単純な手法にどうして特許が?と言うほどの特許も多い様であり、こんなことは日常茶飯事らしい。
 特許や実用新案とアイデアが保護される様になったのは確かに有り難いことである。苦労して考え、開発した技術が優れていればいるほど真似されるのだ。簡単に複製品が作れることも優れているからこそである。一番初めに考えた人の苦労を見れば、保護してしかるべきかと言う気もする。
 序文で述べた様に、最近はビジネス特許等と言って方法そのもので特許を取ることも可能となった。以前はアイデアを形にするのに苦労したらしいが、今はまさにアイデアそのものが特許になるわけだ。
 音楽や絵画は、その類似したものと言うだけで著作権問題が出てくる。小説も然り。しかし、ここで今現在保護されていないアイデア(創作物)がある。それは小説のネタだ。これは別に過去の大作家の小説の登場人物名だけ変えて出版していいかとか言う話ではない。具体的に言うと推理小説のトリックのことである。何故か保護されず、探偵の名前だけ変わり使い回されているトリックを読者は有り難がって喜ぶのだ。
 なぜトリックに著作権がないのか? 特許が取れないのか? その答えは割と単純で、法に反する様なものは特許が取れないからなのだ。と言うよりそういう法律なのだ。
 しかし、良く考えて貰いたい。法律と言うのは万全で強固で各国共通で不変なものだろうか?そりゃそうさ、どこの国でも泥棒や強盗や殺人は犯罪だもの。うむ。もっともな意見だ。しかし『否』と言える。法律など時代により変化の激しいあやふやなものなのだ。
 確かに例に挙げられるような、窃盗や殺人は(余程のことがない限り)犯罪であり法で取り締まるべきものだ。しかし、思い出して頂きたい。例えばネズミ講は初めから犯罪だっただろうか? キャッチセールスや押し売りは本当に法で取り締まれるものなのか? アメリカでしばらく前まであった電話のタダ掛けは法に反していなかったのでは?ハッキングはどこまでが犯罪? ストーカーは?
 法の目を潜ろうと考えている人の努力の甲斐もあり、過去には違法で無かったことが法で制限されるようになってくることもある。そして、米の輸入制限、自衛隊の海外派遣、規制緩和による動植物の輸入種増加など、過去には違法だったことがそうでなくなることもあるわけだ。
 このように法律は時代で移り変わる物だと言える。ならば、今現在は法に反する行為であったとしても、ビジネス特許として認めなければならないものがあるのではないだろうか? 法整備が整ってから、ヨーイドンで特許の申請を受け付けたのでは最初に考えた人のアイデアが保護されているとはとても言えないのだ。つまり、儲ける手段は、何でも特許を取っておき、法律に反しなくなった時点で有効にするべきなのである。
 さて、ここで私が考えていることは、『武器を持って金融機関に入り、金品を要求する』と言う商法をビジネス特許として申請することだ。この場合、ほぼすべての銀行強盗が私のビジネス特許を侵害しているわけで、収入の何割かを頂くとする。銀行はもちろん保険に入っているだろうから別に被害は無いし、どこからともなく降って湧いた金を頂戴出来るような気がするのだ。まあこれも警察が(金品強奪後に)彼らを捕獲してくれることを期待してだが。
 もう一つ考えてはいるが、『人質を取り、金品を要求する』程度では大雑把過ぎて特許が取れなさそうではある。誘拐の検挙率から考えてこちらの方が回収率が高そうだ。



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