アンパンマンは君だ

高橋英明



1 はじめに
 社会性は知的生命体に時代を問わず要求される必須の能力である。だが社会性の欠陥から義務教育課程の授業活動が破綻する例が特に学級崩壊という名で知られている。
 本稿では、全国的に急激に発生した現代社会の病巣である学級崩壊について、MMRで学んだレトリックを応用し、問題の傾向と対策を示す。

2 教室に於ける現代性混乱
 異常の現状から病巣の根幹(原因)を考えよう。具体的症状としては、生徒が勝手に振る舞い、授業を継続不可能に陥る状況が挙げられる。
 もしその行動が政治的意図を持つなら、全共闘や 愚連隊(不良による反抗)という組織的な抗争の前例がある。これらは組織間の抗争であり、闘争であった。(蓋し それらの団体には指導・管轄する背後組織が存在した)
 しかし、学級崩壊には指導・管轄する背後組織はない。だが、政治的色彩も持たず、組織的指導もないまま、(社会性の欠如という精神的異常によってではあるものの)一般市民によって学校という恣意的な社会が崩壊したことは正に市民革命、ベルリンの壁崩壊に相当する快挙ではある。

3 周辺概念との差異から現れる特徴
 前時代に於いて社会性の欠如とは、「人付き合い」能力の不足を指していた。その典型が登校拒否であったり引き籠もりであった。しかしその孤独と葛藤のストレスが却って自己を昇華する源となり得た。
 対し学級崩壊は級友との人付き合いの為に教師との関係を捨てている。その選択は無思慮で且つ、快楽原則に則って行われている。
・前者は自意識過剰な青少年の落とし穴--->頭でっかち
で在るのに対し、
・後者は短絡的、短期的、直情的行為
で在る訳だ。前者ではない後者ということは・・・
なんと、学級崩壊を起こす問題児は、脳が萎縮していたのだ!(M)

4 要因としての 時代背景と影響
 脳の萎縮はなぜ起きたのだろうか。
・・・この特徴は、トルエン中毒の症状と類似性がある。
・・・トルエンの吸引行為は、アンパンと言われる。
ならば、トルエン常用者(学級崩壊実行者)は さながらアンパンマンだろうか。
 そういえば、ただでさえ社会経験の不足しがちな小児が 影響を受ける環境は限られている。
三つ子の魂百までと言われるが、幼少の人格形成期に受けた影響は特に色濃く残っていても不思議ではない。幼児が接するメディアと言えば絵本である。現代絵本界隈で燦然と輝く金字塔と言えば誰が何と言おうと小さな消防車ジプターアンパンマンである。
アンパンマン・・・この奇妙な一致が何を意味しているのか(M)・・・
われわれは、精力的に調査を続けた。

5 アンパンマンの秘密
・・・そして彼らは文化や祖先の区別も許されず、十把一からげにカビルンルンと呼ばれる被差別賤民。彼らを引き連れて颯爽と人種差別に異議を唱える、まーちん・るーさー・バイバイ・キンぐ・Jr。彼らの折伏(しゃくぶく)は イースト菌至上主義者(乳酸菌のみ二等市民)の心を揺さぶる。自らの非を認め、俗悪の中に第二の人生を歩むことを考え始めるスーパーヒーロー(ふやけたorかびたアンパンマン)だったが、彼に忍び寄る黒い影。
 ナルシストにして まっどさいえんてぃすと のジャム爺は(インチキ宗教よろしく)一切の対話を許さず、微塵の懐疑も認めず、無条件の服従を要求していた。ジャム爺は余計な事を知った者は容赦なく切り捨て、洗脳し、形容ではなく文字通り頭をすげ替えて残虐非道なヒーローを復帰させ続ける!
 ・・・アンパンマンという都市伝説を調べると、そこには上記のような世界が延々と繰り広げられていた。(毛唐人が誤って観賞しよう物なら、その将来は不安に満ちている内容である)
 しかし、やなせ画伯は重要なメッセージと共にあの作品を提示されていたのだ。やなせ画伯ご自身の手による詩は訴えている。
「何が君の幸せ? 何を見て喜ぶ? 解らないまま終わる、そんなのはいやだ!・・・」
 どうだね、諸君。先生(やなせ画伯)は、前段として我々が幼少の砌に巨悪を染み込ませ、巨悪は理解可能な、快楽に近い物であることを 物語として知らしめられたのだ。そして後段として分別のついた砌には その歌詞により自らの問題定義(アンパンマン)を哲学させ、そして、強制ではなく自らの意志によりバイキンマンを肯定させられているのである。安易なヒロイズムに潜む恐怖を此処まで解りやすく提示された先生の力量には感服の他無い。

 だが、なぜ先生のメッセージであるアンチ文部省なメッセージは突然芽吹いたのだろうか?その謎を解くには、時代を読まなければならない。
 時代的変化は環境に於いても著しかった。その関係を付図に記す。

 時間

 ←過去

未来→ 

 躾

 戦争

労働

学問

文学

マンガ

ゲーム

犯罪

 欲

 労働

学問

文学

マンガ

ゲーム

犯罪

自殺

 ブーム

共産主義     

 グルメ

 

 

学級崩壊     

付図1 親の躾と 子の欲望、時代に於ける対照

 どの時代も見事に 親の心子知らずで笑ってしまう。また経時変化を見ると、個人主義の台頭と言える。問題の学級崩壊は、活字離れと時期が一致する(M)。
 確かにゲームでは、主人公が仲間のために殉死してもバッドエンドである。主人公は仲間を使い捨ててでも生き残るべきだという観念を、生き返る(リセット)という非現実的アプローチを駆使し、繰り返し刷り込まれる(その上、斯様な前提でのドラマの見せ場は仲間の殉死だったりする)。この環境で育まれたなら、自己中心的に振る舞わない方が(学習能力の欠如という意味で)脳がイカレているはずだ(M)。これがゲーム禁止、悪ゲーム追放運動が望まれるゆえんである。
6 おわりに
 やや遠回りな文脈に為ってしまったが、時代の文脈において我々が提唱を許される直接的な学級崩壊解消法は単純明快、明朗である。
 「ゲームなんていけません! もっと漫を読みなさい!・・・(マンガいやならアニメでもいいから)」
 ただ、学級崩壊自体を愛でる選択を視野に入れて頂いたところで お別れの時間である。
バイバイキーン☆




注釈

MMR:
人を疑うことを知らないのか、私の知人の知人は、マガジン・マンガ・レポートの略だと信じていた。
MMRレトリック:
安直なアナロジー、極力検証を怠る断言等を駆使し、正直な憶測を臆面もなく垂れ流しする文章作成法(M)。
本論では可読性向上のため、文末に(M)のサインでMMRレトリック適用の箇所を明らかにしている。
知人の知人:
主に発言者を指す。
学級崩壊の背後組織:
いや、これは在る。とするのも机上理論としては面白い(かも)。ご存知の方は、論文による報告を頂ければ幸いである。
ジプター:
不当な差別を忘れ努力する姿勢が友情を勝ち取る名作。俺ならふてくされて絶対動かないのに・・・というストレスが後世のゲームブックブームを産んだ。
アンパンマン:
余談だが、フレーベル館のアンパンマンは、結構影のある顔をしている。アニメとは別物だ。
乳酸菌:
彼らの乳酸菌差別は、犬畜生扱いによって表現されている。
ナルシスト:
自らの姿に理想像を認める者の造形は 自ずと自らに似る。
不安:
例えば国家社会主義の労働者党に入党等して外人を排撃しかねない。まぁ、「シナ人相手の愚行を武勇伝と勘違いして語る」様な臣民の恥な老人をを稀に見かけることもあるのだが・・・(苦笑)
親の心子知らず:
常に子の思考回路はバカであるが故に親の理解を超えている。とはいえ、ゲームに至っては親の検閲が出来ないから始末に負えない・・・。(書物なら予め親が読み 有害度(読書の許可)を選別できるが、マルチエンディングのゲームを調べるには・・・泣けてくる物がある。そんな意味でもゲームは野放しである)
活字離れ:
活字がないマンガは辛い。故にゲーム世代以降を指す。
悪ゲーム追放運動:
PTA主催で校庭にてたき火を焚き、魔女狩りよろしく没収したゲームを焼こう!という趨勢。(ゲームオタク主催で面白くないゲームを糾弾するクソゲー追放運動とは異なる。)
許される:
自分がしなかったこと、出来なかったことを子供に要求するのは酷だ。自分がなし得たことのみ、勧めることが許されるだろうと言う見地による。



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