藤野竜樹
近年になって、地球に優しいなどという意味を持ったエコロジーという考え方が普及してきたが、それに伴い俄然鼻息を荒くしてきたのが環境保護団体である。彼らは常日頃から新規の開発事業に対して目を光らせており、東にダムを造るとなれば、プラカードと共に現れて妨害し、西に山間道路を造るとなれば樹に抱きついて修行に励むという、実に殊勝な心がけを持った人物達だ。
元々、赤字必至で行われる土木事業は開発業者を太らせるだけだという陰口はよく聞かれるところであり、彼らに同情すべくもないとは思うが、環境保護団体にしても、リゾート法などという無謀な法案がまかり通っていた90年代前半には何故彼らはおとなしかったのか? とか、山林保護に始めた筈の一坪地主制度が、土地価格が十倍になったら売りに出されるのは何故? とかを思うとき、一見対立しているかに見える両者が動き出すときの行動の指針が“利権”という場所から根を張っているのが見えてしまい、筆者などには野暮天同士の馴れ合いとしか受け取れなかったりする。
しかしそうは言っても、我が身の周りを見回す余裕が社会に出てくるに従って、環境保護団体は今この瞬間にも増殖を続けているのだ。となれば、気紛れな時代の趨勢に流されてみるのも一興ではなかろうか。本稿はそうした眼目から、筆者のアナキな感慨とは裏腹に、環境保護団体のそれでも存在する利点を明らかにし、それを利用していこうとするものである。
環境保護団体とはそもそも何をする団体であるのか。花とゆめ5月号(いつの?)によると、「現行状態を損なう行為に対し、人海戦術による妨害、場合によっては破壊活動によってその執行を停止,中止に追い込むことを目的とした秘密結社。」とある。平たく言えば反対運動を専門に請け負っている団体なのであり、死語で申し訳ないが「ちょっと待ったぁ!!」をする人達のことである。開発などに反対する理由は、まっとうなものでもいちゃもんでも、とにかく今ある状態を開発などにより変更するなんて事が、人道に悖(もと)るとんでもないことであることを世間にアピール出来れば良いということだ。
そんな彼ら環境保護団体が、近年強力武器としているのが、汎用鳥型決戦兵器“オオタカ”である。これは、猛禽類オオタカのことなのだが、この種が実に特別天然記念物に指定されているほどの絶滅寸前状態であることから、彼らの捕獲は言うに及ばず、彼らの生息地域さえ犯してはならないというお達しがあるのだ。このため環境保護団体はひとたび新規土木事業があると聞きつけるや、必死になって該当地域にこのオオタカ(及び似たような状況にある猛禽類)の巣を見つけようとする。そして一旦見つかろうものなら、「ほうれ見ろ見ろ。」てな感じで開発業者の鼻っ柱に突きつけるというわけだ。(かなり無理をして巣を見つけることもあることから、巣の捜索自体がオオタカの生存を危うくしているのではないかとの意見もある。)
元々環境保護という概念が欧米から渡ってきたものである手前、日の丸権力もこれには弱いらしく、現在のところこの兵器の効果は絶大であり、徳山ダムも愛知万博(他の地方の人は知らないだろう。愛知県民はこの計画を口外してはならないのだ。話しても聞いちゃくれないという事もあって、ホントに知られていない。)も、工事一時中止の憂き目にあっている。(こうした動きに密かに対処する組織が政府内に発足したと言われる。兵器オオタカを撃ち落として領地拡張をする“場取りオット”なる兵器を開発したとかしないとか。)
こうした傾向がよいのか悪いのかを判断するのは本稿の趣旨ではない。寧ろ環境保護団体を活用するのが本稿の目的であることを思い起こせば、この強力兵器を利用しない手はない。すなわちキーワードは“現状維持”のために“オオタカ”を探すことである。
そう。我々はこれまで、企業の一方的な利潤追求の姿勢によって、多くの資産を失ってきたではないか。そうしたことに一矢を報いるためにこそ、この“オオタカ”が最適な武器となるのである。
すなわち連綿と続いてきて我々が好んで使ってきたある企画を、企業が放棄しようとしたようなとき、その企画の中にオオタカを見つける事によって、企業にその停止方針を再考させることが出来るのだ。
アナログレコード,βmax,Lカセット,ビデオディスク,RGB端子(むかしの),ポケットベル,バーチャルボーイ,セガサターン...。
次々と浮かんでは消える苦い思い出達...。あなたの中にもこうした思いをよぎらせるものが一つはあるのではないか。我々がその中にオオタカを見つけなければならないものは、かくの如く多いのである。我々は今こそオオタカ探しに立ち上がらなければならない。
本提案を実行するには、ひとえにオオタカを見つけられるかにかかっている。よって最後に、オオタカの探し方の秘訣を呈示して幕としよう。日本野郎の会の北島三郎氏によればそれは、「オオタカの気持ちになること。」なのだそうだ。オオタカの気持ちになってβmaxの上を走り回れば、中に巣が見つかるということなのだろう。(蜘蛛の巣かもしれないが。)
氏が身をもってこれを実践していることを鑑みれば、本アドバイスが有益であることは疑う余地がないだろう。
サブちゃんはどこでそんなこと実践してるんだろうって。やってるじゃないですか、暮れの紅白で“トリ”を...。
PS
近年、ドリームキャストにオオタカの巣が見つかったという...。
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