必然的進歩

高橋英明



 失敗の原因を 予測不能な偶然(運)に押しつければ、反省する余地はない。
しかし、ラプラスの魔は 凡ての事象を必然に位置付ける。
運や偶然という (必然性の理解を伴わない)認識は、主観的状態に過ぎないから、この宇宙が 人知の及ばぬ厳粛な必然に 支配されているという主張と矛盾しない
ところで、自然科学は 必然性を成立させる様な規則を、原理(一般的法則)として 明きらかにしていく。
そして、再現性のある発明は、「何らかの原理の応用」という 範疇から逃れ得ない。
 特定の個人の名で呼ばれている諸法則は、それが正確である限り、論理的に導出が可能な範疇を越えることは出来ない。
 例えばオームの法則と呼ばれている法則は、決してオーム氏が(物理法則変更を申請しYahweh神に許諾され)形成せさしめた現象ではないだろう。
 原理は、科学者や技術者とは独立に存在していたし、存在し続けるだろう。
それにも係わらず、自然法則の応用による恩恵(発明)の一部は、意匠専用権や特許権で局所的な存在(企業や発明家)に占有(所有)される。
 私は、問題を緩和・解消する手段(有益な技術) を現実化する行為を、賞賛に値すると評価するが、それは富者が貧者を搾取する必要性を伴うもので無い(特許制度廃絶を期待したい)、と考える。
心ない利己的な功利主義者が 発明の檜舞台から去ったとしても 心配には及ばないだろう。
何故ならば、例えば電話の発明はほぼ同時に複数の人物が成し遂げている。 まっとうな発明であればこそ、実現可能性に限らず、発想までを含めて再現性を持つのである。
要するに、この主張の主旨は、
仮にiMacがなかったとしても、e-oneが発売されただろう、と言うことである(注釈)。



注釈

ラプラスの魔:
凡ての構成要素が厳粛たる法則に従うのなら、過去も未来も特定される、という話らしい。
(逆の主張とも言える不確定性原理は、人類の技術的・主観的問題であり、神の視点を想定すれば霧散するだろう。)
矛盾しない: それだからこそ、厳密な未来は予測できない我々ですら、条件を整える事により、相応な範囲での再現性を得うるる。
機械や装置によって、必然性を操作する手段を近代文明は提供している。
原理の応用: その原理は まだ 未知の原理 の可能性は ある。
しかし、「原理の応用」という 範疇を逃れた(再現性の無い)発明に、詐欺以外の用途は発見されていない様だ。
Yahweh: (ユダヤ教を 基底に戴く諸宗教で)宇宙を統治する存在。
特許: 主旨としては、発明行為を保護し、技術革新を活発化させる為の制度らしい。
原理や法則すら、人間の所有の対象に据える制度。自然環境や生態系を破壊することに比べ、勝るとも劣らぬ 野蛮な風習に思えるがいかがだろうか。
搾取:
共産主義者臭い表現で恐縮だが、特許制度は 巧妙に偽装した搾取 に他ならないだろう。
何故ならば、早いもの勝ち で利権を貪らせる制度は、研究活動を専門化させ、巨大な開発費を投入できる存在に利権が集積することは想像に難くない。
結果、富める者は富み、貧しきものは更に貧しくなるという 構造が 維持されるだろう から。
(念のために補足するが 私は 共産主義者ではない。日本共産党の不透明さには嫌疑を禁じ得ないし、愚民(私を含む)を過大評価したり、天皇制を否定する態度には嫌悪感を感じる。
その政党を現実問題として他の政党と比較する時、優れた点がある事も否定は出来ないが。)
特許制度廃絶:
この場を借りて、滅私奉公の精神で研究は為されるべき事と、公益事業として研究活動を位置づけ、科学技術を育成し、助成する制度実現の必要性を訴え、利権集積制度としての 特許制度を廃止することを提案したい。
再現性:
これは、自慢話の余談だが、8年ぐらい前、私は既に液晶ビューカムの様な発想は在った。
近年では エネルギーの有効利用の観点から、排気循環型の掃除機を提唱していた。
友人・知人には話したものの、実現した各社に投書や提案はしていないので、あの発想は(別に私に固有のものではなく)、歴史の必然に沿った発想だったようだ。
ちなみに 近い将来は、純粋な発熱装置をヒートポンプに置き換える構想を 挙げることが出来る。
(但し、私は第二種永久機関など、常識的には肯定しがたい構想をも抱えている事も事実だ)
iMac: (クリスタルボーイ[1]っぽいコンセプトの) パソコン型インテリア。
(インテリアという表現は、賞賛の表現である。詳しくは参考文献[2]を参照)
e-one: 個人的視点で恐縮だが、CMのBGMに L'Arc~en~cielを起用していたパソコンである。
恐らくe-oneと間違えてiMacを買ってしまった L'Arc~en~cielのファンも 居ろう。
注釈: 無論、憶測(笑)の域を出ない。


参考文献
	[1] 寺沢武一, JUMP COMICS DELUXE「SPACE ADVENTURE コブラ」, 集英社
	[2] "LETTERS", GraphicsWorld (1999年12月号 p.182), 株式会社アイ・ディ・ジージャパン



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