同一性障害がささやく新社会

高橋 英明




「科学が 万能である」という 概念は 妄想であり、事実と異なる。
だが、科学者は 科学を万能に近づけるべく日々努力し、科学は 刻一刻と 進歩している。

先日(1998/10/16)、性同一性障害を解消するための性転換手術が 日本でも行われた。技術(と倫理観)の進化に伴い、この様な解決法が実現したことは、我々を驚愕させた(…私のような古い価値基準を持つ人間は、肉体と精神の落差を 精神の修正で解決すべき問題と思い込んでいたからだ)。
だがしかし、数多き生物の中で人のみが人権を得る根拠は 人の持つ精神の偉大さに在るとすれば、「人間は(肉体と精神では)精神が上位の生き物であり、精神に こそ基準を置くべき」であろう。

 前述の如く、性同一性障害は有力な解決方法を得た。
だが、同一性障害は性のみに限らない。例を挙げよう。
「…ああ 人は むかし むかし 鳥だったのかも 知れないね。こんなにも こんなにも 空が恋しい。」
全国的に有名なこの歌の主人公は、「鳥の精神」と「人の肉体」の 同一性障害に苦しんでいる。かつては 諦めるしかなかった この障害も、科学が進化すれば 鳥の身体を得ることで 解決できる。

 だが此処で 我々は 新たな問題に直面する。
鳥と人の同一性障害に苦しむ者が 鳥になったとき、それを 人として扱うべきか、鳥として扱うべきか?
 その時、忘れてならない事がある。それは その人が、「心は鳥であったのに人として存在」し、「人として扱われる事」よりも「心身共に鳥である事」の方が ふさわしかったという事実だ。故に 「既に鳥になっても 人として扱うべき」と言う人道的判断は、その鳥には残酷である。
それの精神的安楽のためにも、それは既に鳥になのだから、鳥として扱うべきなのである。故に 鳥になった瞬間に その人権は喪失する。そうなれば、それを「●ーネルクリスピー(\130)」や「チキン●リーポットパイ(\460)」にしちまっても俄然O.K., no probrem, 至極当然である。
そして この解決法は、人口増加問題と、それに付属する食糧危機を解決出来るから、まさに一石二鳥。喜ばしき哉、科学は 刻一刻と 進歩しているのである。


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