はげを如何に克服するか
〜私の髪がまだあるうちに〜

杉山 晃一



はじめに

「はげ」という言葉は元来,差別的な用語として用いられてきた風潮が強い.世の中の人を「はげている人」と「はげていない人」に分類したとすると,「はげている人」というのは少数派で,そうでない人が過半数を占めるという頻度分布を仮定することができる.但し,このような分布は年齢や性別などの条件によって変動がある.「歳をとると,はげやすくなる」とか「女性よりも男性の方が,はげる確率が高い」といった傾向は,一般に良く知られている.ところが,近年,この傾向に変化が生じているようである.例えば,抜け毛予防や発毛促進用トニック,「絶対バレない」ことを歌い文句にしたカツラ等…が様々なメディアを通じて大々的に広告されるようになってきている.ましてや,「女性用ア○○○○」などという商品が発表されるに至っては,既に異常事態であると考えざるを得ない.我々の知らないうちに,年齢・性別を問わず「はげ」が蔓延しつつあるのではないか,という予想が今まさに現実味を帯びているのである.実際,筆者も20代後半を過ぎた頃から,毛髪の量はもとより,その太さが異常な程減少していることに気付き,愕然としたものである(現在進行形).本論文では,「はげ」についての頻度分布およびその要因について考察し,来たるべく「はげ社会」を如何に乗り切っていくかについて(1)物理的対応,(2)精神的対応,の観点から論じることにした.

........私の髪がまだあるうちに.



1.「はげ」に関する頻度分布とその要因について

1.1頻度分布

 「はげ」に関する頻度分布は,年齢・性別を考慮すると一般的に図1のようになっている.
年齢を考慮した場合
   年齢を考慮した場合

性別を考慮した場合
   性別を考慮した場合

図.1 一般的に見た頻度分布

筆者が考えた,今後予想される頻度分布は図2のようなものである.

今後予想される頻度分布

図.2 今後予想される頻度分布

1.2「はげ」の要因について

何故,図2のような頻度分布になるかを予想したかというと,今日の社会において,以下に挙げるような非常に多くの「はげ」の要因が考えられるからである.

・生理的な要因(ホルモンのバランスによるもの)

一般的に,女性の髪の毛は年齢を経ても,それほど減ることはない.これはつまり,女性ホルモンが毛根の量や髪の質を保持する役割を担っているからである.これに反して,男性ホルモンの分泌が著しいと,「はげ」の兆候が顕著になる.また,男性でも女性でもこれら2種類のホルモンを分泌するが,そのバランスには個人差がある.これには遺伝的要素も大きく関係している.


・精神的な要因(ストレス,神経質,助兵衛等)

ストレスではげることがある.円形脱毛症とかがそれである.ただ,このような場合,完治すればまた毛がはえてくるので,さほど気にすることもないであろう.問題なのは,つまらんことであれこれと悩んだり,くよくよしたりする神経質なタイプに,「はげ」の傾向が強いということである.昔から,「あんまり悩むと,はげる」と言われているのは,このことを示唆している.見た目にそれほど神経質でなくても,木目の細かいマメなタイプの人は,これに属するものと考えられる.また,好色で且つネチネチとしつこいタイプの助兵衛な人の場合,明らかに神経質タイプの範疇に入っていると言えよう.

 よく,「助兵衛な人ほど毛深い」と言われる が,これはむしろ,髪の毛以外の体毛が濃いことを指していると考えた方が良い.現に,頭の毛は薄いのに体毛が異常に濃い(助兵衛)男性が世の中には実在する.髪の毛と体毛に関するギャップについては,前述の生理的要因で述べたような,ホルモンのバランスに関連している.つまり,助兵衛なことを頻繁に考えると,頭部に男性ホルモンが偏在し,「はげ」が促進されてしまうのである.この結果,頭部以外の部分に女性ホルモンが偏り,体毛が濃くなるのである.




・物理的・化学要因(頭皮の圧迫やダメージヘア,食品,抗生物質等)

 帽子とかヘルメットを年中被っていなければならない環境(建築・土木・工事業,スポーツ選手等)にいる人は,はげる確率が高いようである.これは,長時間に渡って頭皮を圧迫することが,抜け毛を促し,発毛を妨げてしまうためである.「部屋の中で帽子を被っているとはげる」と言われるのは,この傾向を危惧しているのであろう.また,髪そのものにダメージを与えるような髪型とか脱色などは,化学的に「はげ」を促進してしまう要因である.従って現在,髪の毛を錆びさせている人は要注意である.これ以外の化学的要因としては,我々が普段口にする食品や薬品等が挙げられる.最近とみに「合成保存料・合成着色料無添加」だとか「有機野菜」だとかいう製品を目にするが,人体に悪影響を及ぼすものが混入しているか否かなんて,消費者は確かめようがないのである.また,病気になった際,できるだけ早く治療したい,という考えから,我々は抗生物質の助けを借りることがある.しかし,良く効く薬ほど副作用を伴う危険性は高い.これらの物質を口にし,体内に蓄積していくことで,人間の体質は遺伝などを通じて次第に変化していく危険性がある.以上のことから,食品や薬品等が「はげ」を促進する一因になっていることは十分にあり得るのである.



・科学的要因(電子・情報機器等から発生する電磁波)

電子・情報分野における技術の高度化は,経済の発展に多大なる貢献を担ってきた.しかし,果たして世の中は本当の意味で快適になったのであろうか?いや違う(反語).我々は日常において,家電製品に限らず,様々な電子・情報機器に囲まれ,それらから多大なる恩恵を受けて生活をしている.しかし,こうした恩恵の裏に,実は目に見えない厄介な問題が潜んでいるのである.これらの機器からは,多かれ少なかれ,電磁波が放出されている.電磁波の中でも特に放射線(放射性元素から発生するα線,γ線等)を大量に浴び続けると癌になったり人体に何らかの異常が発生することは,良く知られている.普通に暮らしている分には,それほど大量な放射線を浴びることはないであろう.しかし,実は,電子・情報機器などから放出されるような微弱な電磁波に対しても,大量に浴びることで人体に悪影響が及ぶのである.このようなことを懸念する声は最近になってようやく耳にするようになってきた.ここ数年におけるコンピュータやゲーム機,ポケベルや携帯電話等の大規模な普及に伴い,数十メガヘルツ〜数ギガヘルツの電磁波が辺り構わず飛び交うようになっている.年齢・性別を問わず,髪の毛が細くなったり,抜け毛が多くなったりする人が増えているのは,実はこういう所に大きな要因があると考えられる.

以上のような要因から,今後,「はげている人」は,年齢・性別を問わず,ますます増加していくものと予想される.次章では,来たるべく「はげ社会」を如何に乗り切っていくかということについて,(1)物理的対応,(2)精神的対応,の観点から論じることにする.

2.「はげ社会」を如何に乗り切っていくか

2.1物理的対応〜日本古来の知恵を借りよう

「歳をとるとハゲやすくなる」とか「女性よりも男性の方がハゲる確率が高い」などといった傾向があることは,既に述べた.

日本文化において,数百年ほど前には男性の「ちょんまげ」は主流であった.しかし,実際,あのような髪型を維持するのはかなり面倒そうである.なぜ,日本人男性は,わざわざあのような髪型をしていたのか?これは実は,「はげ隠し」の為だったのである.古の昔より,日本人は,男性の髪の毛が減りやすいことを学んできた.しかし,大抵の場合,減っていくのは前頭部からつむじに至る部分までで,後頭部に至っては,そう簡単には抜け落ちることはない.恐らく,この点に着目し,頭髪の変化を未然に分からなくするための知恵が,長い歴史の間に「ちょんまげ」という形で定着していったものと予想される.

 若いうちから「ちょんまげ」にしておけば,歳をとる毎にはげてきたとしても,全然見分けがつかないので,非常にナイスな髪型であると言えよう.
図3に「ちょんまげ」の構造を,図4にそのバリエーションを示す.

「ちょんまげ」の構造について
図.3 「ちょんまげ」の構造について
様々なバリエーション
図.4 様々なバリエーション

 では,髪の毛が少なくなってしまった女性の場合にはどうすればいいだろうか?時代劇などを見ると,図3の簡易型とも言える図5のような髪型の人も数多く出てくる.男性に比べ,髪の毛の減少が著しくない女性の場合,このようにしてみるのも良策かと,考えられる.

簡易型

図.5 簡易型

2.2精神的対応〜みんな同じなら恐くない

日本の文化は,元来,「和」を重んじるものである.これは目まぐるしい勢いで情報化・多様化する今日においても,何ら変わることはない.いつの時代も,「長いものには巻かれろ」的発想が優先されるのである.過半数であること即ち「普通」とみなされるのである.人口の過半数(男女・年齢を問わない)が「ちょんまげの人」であるなら,それは「一般人」であり,全然,問題はなくなってしまうのである.
  みんなが同じ「ちょんまげ」なら全然恐くないのである.
3.まとめ

江戸幕府の解体に伴う鎖国の廃止により,欧米の文化が怒涛のごとく入り込んでくるようになって早130年.「ちょんまげ」は舞台や演劇にその一部を残すのみで,一般大衆からは姿を消してしまった.来たるべく「はげ社会」を迎えるにあたり,今こそ日本古来の知恵「ちょんまげ」が再びその威力を発揮する時である.だから,抜け毛や毛髪の減少に悩む諸氏よ,戸惑うことなかれ.「ちょんまげ」こそ,これからを生き抜く我々の心の糧となるのだ.


4.参考文献

彩花みん著:赤ずきんチャチャ4巻(集英社)
第19話「魔法使いセラヴィー誕生秘話の巻」
第20話「どろしー救出作戦の巻」



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