水田徹
1.序
科学は、人類が有史以来その手中に納めてきたものの中でも最も素晴らしい戦果の一つである。科学的手法によらず学問が体系化されることなどめったにないし、また科学の産物によって、我々は豊かな暮らしを享受している。20世紀も終わりに近づいた現代、科学理論はその完成度を高いレベルまでもってきているが、まだまだ見逃している点も多いと言わざるを得ない。 私は誰もが身近に知っている事象を通じてその点を啓蒙し、科学への理解を深めたいと考える。
2.真っ赤な太陽
夕焼け空が赤いことは誰もが知っていよう。空一面が真っ赤に染まった夕暮れにとんぼを追いかけたのが今となってはなつかしい思い出という人も多いようだ。それでは、夕焼けが赤いのはなぜなのかご存じだろうか。この理由については次のような理論が正しいとされている。すなわち、夕日が赤いのは、太陽光線が地球の大気中を通過する際、(昼間に比べ通過する大気の層が厚くなるため)青色光のような波長の短い光線は大気を構成する分子によって散乱吸収させられ、波長の長い赤色光のほうが多く届くためである(fig.1)、と。
この説明は一見正しいように思える。しかし、事実を注意深く観察する者にとっては、この説明にひそんでいるまやかしを見抜くのはさほど難しいことではない。そう、実は夕焼けがあのように赤いのは、大気による光の吸収散乱だけで説明できるものではないのである。本稿ではこの点について指摘し、同時に現在の科学常識を打ち破る驚愕の真実をも白日の下にさらしたいと思う。
3.朝焼けの光の中に...
あなたは朝早く起きて、東の空から昇る朝日を眺めたことがあるだろうか。もし、ないのなら明日の朝にでも試してもらいたい。百聞は一見にしかず、科学は観察から始まるのである。
さて、朝早くから申し訳ないが、あなたの目には何が映ったであろうか。朝日?、もちろんそのとおりだ。しかしあなたが注意深い人であれば、あなたが朝焼けの空をも同時に見ていたことに気付いたはずである。ここが重要なのだ。よく思い出してほしい、あなたの見た朝焼けは一体どんな色をしていたであろうか。夕焼けのように空一面赤色で覆われていたであろうか。否、そうではないはずだ。朝焼けの空は、朝日のごく周辺では赤みを帯びているが、すぐに空の青色とのグラデーションが始まっており、とてもじゃないが夕焼け空のように空を真っ赤に染めたりはしないことが分かったと思う。
4.それでも地球は回っている
なぜ、私がこれほどまで朝焼けと夕焼けが「違う」ことにこだわるのか、常に科学的な視点で物事を捉える者にはすでに分かっていることと思う。再現性は科学の鉄則である。同じ条件下では必ず同じ現象が起きる。これが科学の根幹をなすことはいうまでもない。しかるになぜ朝焼けと夕焼けとで異なった現象が現れるのか。夕日が赤くなるのが、大気による太陽光の吸収散乱のみで起こるのだとすれば、だ。そう、朝焼けにおいても夕焼けにおいても、太陽と観測者の幾何学的関係は全く等しいのである(fig.2)。
朝焼け,夕焼けどちらにおいても、太陽光線が通過する大気の層の長さおよび太陽光線の大気への入射角は幾何学的に同一である。従って、太陽光が大気によって吸収散乱させられる度合いは全く等しい、つまり朝焼けも夕焼けも同じ色のはずである。それなのに両者の間で差異が生じるのであれば、大気による吸収散乱とは独立に、朝と夕とで差異を生じさせる理由(すなわち吸収散乱以外に光を変色させる要因)があると考えざるを得ない。
さて、朝焼けと夕焼けでは何が異なるのか?。観測する時刻や方角は確かに違っているが、それによって太陽光が変色するとは考えられない。しかしここには問題解決への大きなヒントが隠されているのである。時間からは速度,運動、そして方角からはその運動方向が示唆される。運動とその方向、これこそまさに朝焼けと夕焼けの違いを生み出す原因なのである。
朝、太陽は昇る。夕、太陽は沈む。地球が自転している以上、これは当たり前のことである。そして、朝焼けのときと夕焼けのときとでは、太陽に対する地球の回転方向が逆である。朝焼けの見える地点では地球の自転方向は太陽に向かっており、夕焼けの見える地点では自転方向は太陽から遠ざかっている。すなわち観測者の太陽に対する運動方向が正反対なのだ。また日昇,日没時は、太陽から地球に引いた接線に当たる地点にいることになる。つまり日昇,日没時というのは、その観測点での太陽に対する相対速度が一日のうちで最も大きくなるときなのである。
以上のことから、朝焼けと夕焼けでは、観測者の太陽光線に対する相対速度が一日の内で最も大きく違っているという結論が得られる。両者は太陽に対して幾何学的には等しい関係にあるが、運動の観点から見れば最もかけ離れていたのだ!。となれば、朝焼けと夕焼けの色の差異の原因がこの点にあるとみるのは極めて自然であるといえよう。
ここまでくれば問題はほとんど解決したようなものである。原因に対応する結果は一つである。原因が突き止められれば理論は構築できたに等しいのである。
5.ゆく波くる波
高校のとき物理を選択した者ならば、ドップラー効果という言葉を聞いたことがあるだろう。「いや、そんな言葉は聞いたことがない」という者でも、救急車が自分のそばを通り過ぎるときサイレンの音が急に低くなったり、乗っている電車が踏み切りを通過するとき踏み切りの音が低くなったりするといったことに身に覚えがあろう。それらはドップラー効果によって起こっているのである。
ドップラー効果は、波の発生源と観測者の(厳密にはそれらと波の媒質との)相対速度によって波の波長,周波数が変化する効果である。もう少し詳しく言えば、発生源と観測者が近づいているときは波長が短く(周波数が高く)なり、両者が遠ざかっているときには波長が長く(周波数が低く)なるのだ(fig.3) 。ついでに補足しておくなら、音波は波長が短い(周波数が高い)ほど高音になり、波長が長い(周波数が低い)ほど低音になる。先述の例では、発生源である救急車や観測者である電車(に乗った人)が移動することにより、サイレンや踏み切りの音が本来の音より高くなったり低くなったりする訳である。
fig.3 ドップラー効果
では、光ではどうなのだろう。光は粒子としての性質を持つと同時に波としての性質も持っているとされている。粒子としての性質はともかく、波としての性質を持つ以上、光にもドップラー効果は起きる。
光のドップラー効果として有名なものには、赤方偏移というものがある。これは遠方の星から発せられる光のスペクトルが赤方つまり長波長側へずれている現象であり、星が高速で地球から遠ざかっているため起きると考えられる。ちなみにこれは、宇宙は膨張しつつあるというビックバン宇宙論の基礎となっている。
光は波長が短いほど青色に近くなり、長いほど赤色に近くなる。そしてドップラー効果では近づくときは波長が短くなり、遠ざかるときは波長が長くなる。そう、つまり光は観測者が相対的に近づいているとき青くなり、遠ざかるとき赤くなるのだ。そして朝、我々と太陽とは相対的に近づいており、夕、我々と太陽とは相対的に遠ざかっている。ここまで書けばもうお分かりであろう。朝焼けが夕焼けほど赤くないのは、光のドップラー効果によるものだったのだ!!。
従来の理論で説明されて来たように、大気の層を通ることによって赤い光が届きやすくなり空は若干赤みを帯びる。しかし、そこに更にドップラー効果が加わる。赤みを帯びた空は、朝はまたもとの青色側に偏移し、夕はより赤色側に偏移する。その結果、夕焼けは真っ赤になるのに対し、朝焼けはわずかに赤くなるにとどまるのである。
6.24時間は何秒?
しかし、光の速度は極めて速いため発生源と観測者との相対速度がかなり速くないと、その効果は人間の五感に感じられるほど顕著には現れない。では朝焼けと夕焼けにあれほどの色の差を生じさせる地球の自転速度とは一体どの程度のものなのかを導いてみよう。
波長(×10-6m) | 色 |
0.77 | 赤 |
0.64 | 橙 |
0.59 | 黄 |
0.55 | 緑 |
0.49 | 青 |
0.38 | 紫 |
fig.4 可視光の波長
赤方に偏移した結果である夕焼けが赤色であり、また青方に偏移した朝焼けが赤さは残るもののかなり青みがかっていることから次のように仮定しよう。すなわち、ドップラー効果の影響を受けない、大気による散乱吸収のみによって変化した太陽光の波長をλ0=0.59×10-6m、ドップラー効果によって赤方に偏移した夕焼けの波長をλ1=0.70×10-6m、同じく朝焼けの波長をλ2=0.50×10-6m、そして朝及び夕における地表の太陽に対する相対速度をvとする。
(c:光速度=2.997924×108m/s)
ドップラー効果を示すこの式からv=0.1525c=4.57×107m/sが求められる。
そう我々が踏みしめているこの大地は、なんと秒速45700km(時速1億6450万km!!)で進んでいたのである!!。無論、我々をとりまく大気も同じように動いているため、我々にはその速度を感じることはできない。しかし、朝焼けと夕焼けの色の差という僅かな事実からでも、科学的考察によって、我々が知覚することもできなかった重大な真実を導き出すことも可能なのである。
更に、科学的考察を進めてみよう。大地が秒速45700kmで進んでいるという事実から、地球の回転速度を求めることができる。我々の住んでいる場所は北緯約35度(名古屋35.10、東京35.41)である。この緯度における経緯1度の弧の長さは91.288kmであるから、地球が一周するのにかかる時間は、
91.288×360/45700=0.719(秒)
そう、たった0.719秒である。わずか0.719秒で地球は一周しているのである。一日の定義はその天体が自転によって一周する時間である。地球の一日は0.719秒であることがここに証明された訳である。一日が24時間あるという迷信は、このように科学的推論が導き出した真実の前には破れ去るしかない。いかがであろうか、このように科学が進んだ現代においても常識の盲点というものは多々存在するものなのである。
謝辞:この論文を執筆するにあたり、中塚理氏により寄贈いただいた資料から、多大なる知見を得ました。中塚氏にはこの場を借りてあつく御礼申し上げます。
参考文献
理科年表 平成7年 (国立天文台編) 丸善 <中塚 理氏寄贈>
ホーキング宇宙論の大ウソ (コンノケンイチ著) 徳間書店
相対性理論の世界 (J.A.コールマン著) 講談社
トンデモ本の世界 (と学会編)
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