ひあろ
0.序
一人暮らしをしていると必然的にスーパーマーケット等へ買い物に行くことが多くなる。ただでさえめんどうくさくてムダな時間を過ごしているような気がするのに、レジでの順番待ちはさらにムダに感じてしまうことだと思う。特に2人前のおばさんが小銭を1円までピッタリ出すためにサイフを引っかき回しているのを見ると「ばばーはよせいや。」と言ってなぐってやりたくなるのではないだろうか。 そこでこのレジでの待ち時間をなるべく少なくするため、どのレジに並んだらよいかを調べてみた。なお本稿は名古屋市内及び近郊の8つのスーパーマーケット、デパートののべ61のレジについて調査したものを基にしている。
1.いついくか
まずレジで並ぶのを避けるためには店がすいている時に行くのが簡単な方法である。スーパーマーケットが一番混むのは日曜日午後5時〜6時(夏場は7時まで)である。次いで土曜日同時刻。平日もやはりこの時間帯が一番混む。会社やパート帰りの主婦が多いのだろうが、恐らくこれは習慣的なものであろう。つまり夕方になってきたのでそろそろ買い物に行こうかしら、とそういう心理になるのである。ただし、日曜日は1日中人が多い。
以上のことから、買い物は平日4時以前に行くとよいことがわかるだろう。この時間帯ならばレジで並んで待つとしてもせいぜい1人か2人ぐらいのことである。日曜日6時ともなると自分の前に12人ぐらい並んでいたりする。
2.店の作りと、どのレジが一番混むか
スーパーマーケットやデパートの食品売り場というのはだいたい図1のような作りをしている所が多い。ここでは仮にレジを6台とし、(1)〜(6)の番号をふってある。
客はまず野菜・果物売場から入り(この前にはレジがない。したがってここから出てくる客はいない)、肉・魚売場を通り、途中雑貨や菓子などを見ながら最後に牛乳を買ってレジに並ぶ。ずいぶんあらっぽい言い方だが、だいたいは以上のような感じで買い物をする。この流れから言って当然(1)番レジに最も多くの人が並ぶことになる。どんなに混んでいても(6)番レジあたりに行けばそれ程人は並んでいないことも多い。
問題はパン売場の位置である。なぜならパン売場の前のレジも結構混むからである。図1の場合だと(3)番(4)番あたりが混むことになる。
この例では(1)〜(4)番レジが混むことになるが、実はだからといって(6)番レジに並べばよいというわけではない。
店側も(1)番レジが混むということは承知していて、このレジにはベテランのレジ打ちを持ってきたり、2人で担当させたりするからである。逆(6)番レジあたりには新人のアルバイトが入っていたりする。したがって(1)番レジにはたくさん人が並んでいても、人の流れがスムーズで結果的に(6)番レジより順番が早く回ってきたということになったりする。
図1 スーパーマーケットの基本的作り
3.何人並んでいるか、何個買い物をしているか
とは言え、レジ打ちの熟練度がそれ程変わらなければ、やはり並んでいる人の数がそのまま待ち時間につながる。しかし実はこれも一概にそうとは言えないのである。つまりそれぞれの人が何個の品物を買っているかによって待ち時間は大きく変わる。
かご2はいにいっぱいに買っている人もいれば2〜3個しか買わない人もいる。多くの人が並んでいても皆3個ぐらいずつしか買っていなければ、その列はかなり速く進むことになる。
何人並んでいるかは、次に述べるお金の支払い時に影響を与える。
4.どんな人が並んでいるか
もう1つポイントとなるのはレジに並んでいるのがどんな人かということである。これは人によってお金の出し方が違うからである。例えば901円の買い物で1001円を出すか1万円を出すかで、サイフからお金を出す時間やレジ打ちの人がおつりを出すのにかかる時間が変わってくるからである。
5.どのレジに並ぶべきか
以上のことから、どのレジに並ぶかを決めるためには
(1)そのレジに何人並んでいるか、又1人々々が何個買っているか
(2)そのレジ打ちの熟練度はどのくらいか
(3)並んでいる人はどんな人か
を考慮に入れなければならないことがわかる。1つずつもう少し詳しく説明しよう。
(1)何人並んでいるか、何個買っているか これは感覚的にもわかりやすいと思う。
3人しか並んでいなくてもそれぞれが20個ずつ買っていればレジ打ちは60個分のレジを打つことになり、10人並んでいても3個ずつの買い物ならばレジでは30個分のレジを打てばいいことになる。つまり、より重要なのは、何人並んでいるかではなく、そこに並んでいる人の合計の買い物点数である。
(2)レジ打ちの熟練度
同じ買い物点数でも高熟練度の人がレジを打てば数秒で終わるものも新人のアルバイトが打つと1分以上かかってしまったりする。
そのレジ打ちの熟練度がどのくらいかというのは顔を見ただけではわからないが、これは何度かその店に通ってよく観察してみるしかないだろう。私の場合はレジで打っているのを見ながら、こちらでも暗算でだいたいの計算ができるかどうかで熟練度を判断している。概算で合計金額を出すと同時にサイフからそれに近いお金を出していれば支払も比較的早くすむはずである。
しかし以前に私はレジ打ちのむちゃくちゃ早い人を見たことがある。その人のレジ打ちに私の暗算がついていけないのである。こういううまい人は、お客がお金を出すと同時におつりも用意しているものである。ちなみにお客がお金を出してからレジの機械でおつりを計算するような人はそれほど熟練度は高くないと言える。これは(レジ打ちの)経験上言えることなのだが、おつりは暗算で計算したほうが絶対に早い。
又、レジがバーコード読み取り式の場合、熟練度の低い人でもわりと早く打つことができるが、高い人の場合はかえって遅くなってしまうようである。
(3)どんな人か
観察の結果、お客はお金の出し方によって次の6つに分けることができる。それぞれの支払い時の傾向を記す。これはあくまでこういう傾向があるというだけのことで必ずそうだというわけではない。
a:小学生、子供
彼らはせいぜい100円ぐらいのものを100円を出して買う。
b:学生(男女)
彼らは千円単位でお金を出す。つまり1500円の買い物でも、1067円の買い物でも2000円を出す。
買い物点数はせいぜい5点ぐらいである。
c:青年〜中年の男性
一人暮らしをしている人が多いため結構買い物点数は多い。1000円単位で出していてはサイフがすぐに小銭でいっぱいになってしまうのを知っているため、わりとこまかい単位で支払をする。しかしそれも10円単位まで。1円や5円を出すことはない。
d:若い女性
最も効率のよい支払い方をする。802円の買い物ならば1002円を出し648円であれば650円を支払う。レジ側から見てもおつりが出しやすい。
e:主婦(おばさん)
最も効率の悪い支払いをする。1592円で、1円単位までピッタリに払おうとサイフをひっかき回したり、928円でわざわざ1030円払ったりする。又、買い物点数も多く、かごをレジの前に置いて順番を確保しておいて、待っている間に別の買い物に行ったりする。ふざけんな。
f:おじさん
日曜日に奥さんの買い物につきあわされてやってくる。買い物金額がいくらになろうとも必ず1万円札を出す。それもズボンのポケットから。
なお、老人(特に男性)はスーパーマーケットでは買い物はしない。
6.レジでの待ち時間
上で述べたことを瞬時に判断してレジに並ぶことになるわけだが、最後に実際にその列の後ろにつくと何秒待たされるかを計算するための式を示しておく。
T=
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n Σ(Ka + Oa) a=1
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( +H )
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R
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T:レジでの待ち時間
R:レジ打ちの人の熟練度
n:客の数
Ka:a人目の客の種類に応じた定数(表1参照)
Oa:a人目の客の買い物点数
H:ハプニング
* Rは平均熟練度を1とする。新人は0.5ぐらい。プロは1.5以上、先出の人は3ぐらいだろう。ただしバーコード読み取り式のレジでは、Rは表2によって変換される。 ハプニングとは、おつりを落とすとか商品の値札がはがれていて値段がわからない等々の予測不可能なタイムロスのことである。
小学生、子供
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4
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学生(男女)
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11
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青年〜中年の男性
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21
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若い女性
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8
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主婦(おばさん)
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35
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おじさん
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19
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表1 Kaの値(±2)
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R' = R×2 R' = R×1.3 R' = R×1.1 R' = R R' = R×0.9 R' = R×0.7 R' = R×0.5
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( R≦0.5) (0.5<R≦1 ) ( 1<R≦1.3) (1.3<R≦1.5) (1.5<R≦2 ) ( 2<R≦3
) ( 3<R )
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表2 バーコード読み取り式レジのRの変換
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R分布図
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キーボード式
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バーコード式
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この式をもとに例えばレジ打ちの熟練度が1.2で、並んでいる人と点数が、おばさん30個、若い女性6個、おばさん12個、おばさん18個、青年3個であれば
T=
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(35+30)+(8+6)+(35+12)+(35+18)+(21+3)
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1.2
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≒169
となり、その列の後ろにつくと2分49秒程待たされることがわかる。
7.最後に
実際にはこれ程単純ではないが、みなさんがレジに並ぶ時の参考になってもらえば幸いである。
又、自分の番がまわってきたらそれでよいのではなく、後ろに並んでいる人のことも考えて、なるべく早くしかも効率のよい支払いをすることを心がけてもらいたい。
(終)
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