一生に一度のお願い




 昔から無茶なお願いをしてくる奴は数限りなくいる。奴らはそんなときには決まって「お願い、一生に一度のお願いだから」と言う。ここで「そうか、そんなに重要なお願いなのかだったら聞いてやろう。」と思うような奇特な人間はまずいない。大方が「うるせえなあ。しょうがないからきいてやるけど今回だけだぞ。」てな感じでその願いを嫌々受け入れているものと思われる。そして同じ奴から何度も「一生に一度のお願い」をされて頭に来たことのある人も多いのではないだろうか。しかし、ここで怒ることはできない。なぜなら奴らは論理的に間違っていないからである。
 例えば月末に金に困った奴がやって来て「一生に一度のお願いだから五千円貸して。」と言う。渋々貸してやると次の月にもやって来て「一生に一度のお願いだから一万円貸して。」と言う。もうお分かりだろう。「五千円貸して」と言う願いが一生に一度なのであり、願い事そのものが一生に一度ではないのだ。
 では、全く同じお願いをするときにはどうすればいいのか。標的となる人間がしっかりと理論武装しているのなら、そのお願いを別の人にすればいいのである。つまり、その人に対して一生に一度なのであり、全ての人に対してではないのだ。
 さらに図々しい奴になると「一生に二度のお願い」だの「来世の分のお願い」だのといった技を使ってくる。そして、最新の巧妙なお願いは「一生に一度に近いお願い」というものだ。気を付けねば。

<参考文献>
 そんなもんねえよ。



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