匿名希望
概要:
他人の氏名で捺印を行うこと。
目的:
この技術の目的はそれぞれの事情によるものであり、筆者としては明記すべきでないと考えるが、ただこれを必要としている事務労働者は日本国内に少なからずいるはずである。
方法:
第1段階 他人の印鑑を収集する。
必要に応じて他人の印鑑を貰うなり購入するなりして集める。五十音順に整頓して外部の人から見えない場所に保管し、出来れば台帳を作って自分がどの印を入手したか分かりやすくする。文房具屋の店先に立っている回転印鑑ケースを丸ごと買うことができれば話は簡単なのだがそれはできない相談であろう。
第2段階
第1段階でかなりの数が集まっても、日本人の姓は多種多様であり全てに対応するには程遠い。そこで最初に、2文字の印鑑2本から別の印影を合成するという技術を習得する。例えば、「柴田」の上半分と「大塚」の下半分から「柴塚」印を作り出すと言ったように。
・印肉はたっぷりつけても良いが、必要ない部分は完全に拭き取る。
・同じ断面の印鑑を使用する(正円形が最も良い)。
・両方の文字の軸を同じにする。
(全印鑑の文字の最上部にペン等でマークしておき、上半分が押された段階でその文字の最上部と下半分のマークが合うようにする。)
慣れてくると、3文字の合成が出来るようになる。「久保田」の上2文字と「小野寺」の下1文字から「久保寺」。
第3段階 高度な合成技術
それでも間に合わない姓がいくらでもあることは間もなくわかる。その場合には存在しない印影の創造をするよりない。そのためにはまず、必要とされる印影を、幾何学的な点と線の集合体として捉えることのできる感性を育てることから始めなければならない。イメージトレーニングである。最も簡単な例を挙げれば、「川村」と「州村」が類似していることは誰にでも明白だろう。しかし「州村」という印鑑は簡単に入手出来ない。そこで「川」を「州」にする作業が必要になる。
・赤鉛筆の先端を少し丸くして、印肉で湿らす。
・細心の注意を払って正確にかつ控えめに印肉(この場合3つの点)をつける。
逆に文字の一部を消すこともできる。(「日」→「臼」等)
・印肉をつけた赤鉛筆で、乾燥した印鑑表面に必要各部位だけ丁寧に塗り込む。
そして、このイメージトレーニングが高度な段階に達すると、一見まったく違ったように見える印鑑から別の印影を生み出すことができるようになる。
「田畑」→「切畑」 (印鑑の「切」は縦横に直線的)
「小高」→「八下田」(「小」の中心線と「高」の両四角には印肉をつけず、「下」の縦線や「田」の十字は後で補充)
「矢内原」+「針生」→「日比生」(難問、縦横線のみを駆使して合成)
曖昧に押してわかりにくく(それでいていかにもそれっぽく)するのも立派な技術です。
第4段階 それでもダメなら本人に印鑑持参で来てもらう。
オチがついてしまいました。しかし熟達者は約300本の印鑑から日本人のほとんどはカバーできると言います(熟達者談、聞き手筆者)から、誰でも努力次第でかなりの線までは行くものと思われます。
問題点:
技術修得者はこれを悪用しないだけのモラルを持てるか。
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