原子核物理学に基ずく原子力発電推進派擁護論

駅島礼司



 原子力発電に関する論争は今も続いているようだが、それとは関係なく原発はどんどん造られている。反対派が泣こうがわめこうが電力供給に占める原子力発電の割合は増えているし、発電規模も年々大きくなってきている。左翼系団体の意見も、発電所周辺住民の声も無視されているのだ。このように政府や電力会社が強引な手段に訴えているのも理由のないことではない。彼らはあせっているのだ。

 原子力発電に利用されるのは、放射性物質のウラン235である。天然に存在するウランは、いくつかあるウラニウム同位体の中でも最も安定なウラン238がほとんどで、ウラン235の方はわずか0.7%があるにすぎない。現在は、この0.7%のウラン235を苦労して濃縮しつつ発電を行っているのである。ところが、約46億年前の、地球誕生した当時にはウラン235の埋蔵量は、当時のウラン238の埋蔵量とほぼ等しかったことが分かっている。放射性物質が原子核崩壊して減っていくのは仕方のないことだが、それにしても現存する量の100倍以上もの核燃料が無駄になってしまったとは…。

 ウラン235は今この瞬間にも、その半減期に従って確実に減少しつつある。石油、石炭、天然ガスなどの化石燃料は使うことによって減っていくが、核燃料は使わなくても減っていく。だったら使うしかない。それも早急に、だ。

<参考文献>

 山本、石森編 『原子力工学概論(上、下)』 培風館
 深井、鈴木編 『解説・原子力発電』     東京電機大出版局
 武田、仁科編 『原子炉の初等理論(上)』  吉岡書店0



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